先日からご紹介している佐藤政樹さんの『人を惹きつける話し方』に、「話すための書く練習」について書かれています。以前こちらで「『心の中』を言語化するということ」ということを書きましたが、私たちの心の中には、数えきれないほどの思考や感情がありますが、それらをすぐに言葉にすることは容易ではありません。頭の中に浮かんだアイデアや感想は、時間が経つと消えてしまうことが多いですよね。そんな浮かんだ言葉を消えずに残すための秘訣は、「書くこと」なのです。
書けない人は話せない?
なんだ、当たり前のことじゃないか、と思うかもしれません。でも、意外にこれを習慣化している人は少ないのです。私もこれまで心の中に浮かんでは、いつのまにか泡のように消えてしまった無数の言葉たちがいます。佐藤さんによると「話すための書く練習によって、人を惹きつける話の素材がどんどんストックされる」のだそうです。
逆に「書けない人は話せない」といいます。頭の中が整理されていないからです。では、頭の中を整理して、人を惹きつける話をするためには、一体どんな練習をすれば良いのでしょうか?
話すための「型」とは?
佐藤さんは本書の中でそのための「型」を紹介してくれています。その「型」とは、
【コンテンツ】⇒【気づき】⇒【行動】という順番で話を書いてくことです。
【コンテンツ】では日々の生活の中で経験・体験したこと、【気づき】ではコンテンツを通して自分の中で新しく生まれた気持ちを、そして【行動】では、気づきを踏まえ、コンテンツから何を学び、「自分に」どう役立てていくのか、を言語化します。
例えばこんな感じです。
【コンテンツ】先日、思い切って髪を短く切った。その翌日、会社に行ったら、「髪を切ったんですね。似合いますね。」と声を掛けてくれる人がいた。
【気づき】些細なことだが、髪を切ったことに気づいてくれたこと、さらにそれを口に出してポジティブに言ってくれたことが嬉しかった。
【行動】自分も今後、人に対して気づいたポジティブなことを、どんどん口に出してみよう。
この話は実際の私が経験したことです。確かにこれを頭の中で考えただけでは、一瞬「今後はこうしよう!」と思ったとしても、すぐにその思想が流れて消えていってしまいそうです。でも、こうして言語化すると学びになり、「今後同じようなことがあったら、言葉に出して伝えてみよう」という気持ちになります。
さらに深めると
この作業を繰り返していくと、思考が豊かになり、意味のある言葉として口から発することができるようになっていきます。では、これをもっと深めていくとどうなるでしょうか?はい、ちゃんと「応用編」があります。
応用編では
【コンテンツ】⇒【気づき】⇒【自分のストーリー】⇒【根拠】⇒【展開】の順番です。新たに加わった【自分のストーリー】では、自分の過去の体験・経験談を入れます。何かの経験を自分の経験・体験談とクロスさせるのです。そして、【根拠】ではそれまでの話を一般化できるような理論、ロジック、セオリーなどを入れることで話に説得力を持たせます。そして最後、【展開】ではあなたがそれをもとにどのように感じたか、相手にメリットを与えるような情報を交えて書きます。
先ほどの髪を切った話をこの応用編で言語化してみるとこんな感じです。
【コンテンツ】先日、思い切って髪を短く切った。その翌日、会社に行ったら、「髪を切ったんですね。似合いますね。」と声を掛けてくれる人がいた。
【気づき】些細なことだが、髪を切ったことに気づいてくれたこと、それを口に出してポジティブに言ってくれて嬉しかった。
【自分のストーリー】その後、コミュニケーションの場で、目に付いたポジティブなことを思い切って口に出してみた。また、ある時は駅のトイレの清掃の人にも思い切って伝えてみたところ、とても嬉しそうにしてくれた。そして、伝えている自分の方も良い気持ちになることに気づいた。
【根拠】人は誰でも感謝されたい、認められたいという願望がある。相手の自己重要感を満たすことは人間関係構築の上でとても重要だと言われている。
【展開】これからも、相手に伝えられることは言葉にして伝えていこう。相手の頭の上にお賽銭箱があると思って、どんどんポジティブな言葉をかけることをおすすめしたい。そうするとあなた自身も幸せを感じることができる。
いかがでしょうか?
このように思ったことを言語化していくと、日常の経験から深い意味を見つけ出し、それを言葉として発することができます。そして、それはまさに私が日頃お伝えしている「ストーリー」そのものです。でも、千里の道も一歩から。このような「ストーリー」を作るためには、まず「書くこと」が必要です。まずは見たもの、感じたことを書きとめることから始めてみませんか?
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