企業が語る「ストーリー」について、これまでアメリカ発の代表的な企業スターバックス、Airbnbを紹介してきましたが、今日は日本企業として、ユニクロを取り上げてみたいと思います。
スターバックスはコーヒー一杯で「サードプレイス(家庭、職場に続く第三の場所)」を作り、Airbnbは空間(部屋)を貸すことで「暮らすように旅をする、第二の家」というコンセプトを提供しています。こうした企業たちと同じく、ユニクロも服一枚で、人々に提供するものがあります。それは「人々の生活を豊かにする服を提供する」というストーリーです。
ファッションの常識を変える
ユニクロは世界に誇れる日本企業の象徴的存在ですが、その成功の背景には明確なビジョンと強い理念があります。それは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」ということ。これは柳井正氏が1991年にユニクロの母体である「ファーストリテイリング」の社長に就任した時に明文化されました。この言葉はユニクロの全ての行動の根底にあります。
この理念を具現化する形で登場したのが「LifeWear」というコンセプトです。「LifeWear」が出現する前、ファッション界では多くのブランドが競り合っていました。その中に、ユニクロは新しい風を吹き込みました。それが「持続性」と「品質」の追求です。これはそれまでの「安かろう、悪かろう」という常識を変えました。流行を追うのではなく、生活そのものにフォーカスを当て、長く使える品質の高いアイテムを提供することで、消費者に新しい価値を見せました。
さらに、ユニクロは「毎日の暮らしを豊かに」として、二つの大きな顧客層をしっかりと捉えています。一つはファッションに興味のある人たち。「LifeWear」はトレンドを敏感に読み取り、新しいスタイルを提案。有名デザイナーとのコラボレーションなども活発に行い、ファッションを楽しむ人たちにとっての新しい選択肢を常に提供しています。
もう一つはファッションに関心がなく、単に「着るもの」が必要な人たち。ユニクロは、この層に対しても優れた機能性を持つ基本的なアイテムを提供。独自の技術によって開発されたヒートテックやエアリズムなどは、その日常を快適にしてくれます。
かつて日本の衣料品業界において、この層の人たちが明確にフォーカスされたことはなかったのではないでしょうか。柳井社長は「服に興味のない人がストレスなく楽しめるのが本当に良い服だ」として、「世界の誰もが着られる服」としての「LifeWear」も提供しています。このことは、ユニクロがその後のファッション業界で大きくその地位を伸ばしたことからも、相当大きな「革命」であったことがわかります。
ユニクロが他のファストファッションブランドと一線を画しているのは、単に服を販売しているだけでなく、顧客の「生活そのものをより良くする」ことを目指しているからです。この点が、多くの人々から支持を受ける強みであり、またその哲学が形になった「LifeWear」が、日常生活をより豊かに、そして快適にします。
このように、ユニクロはその企業理念と独自の戦略、そして「LifeWear」というコンセプトにより、日本企業の中でも際立っています。そしてそのすべては、人々の日常に寄り添い、その生活を一層豊かにすることを目的としています。それがユニクロの真の強みであり、多くの人々から愛され、そして今日の成功につながる理由です。
もちろん、その成功の舞台裏には、柳井社長の揺るぎないリーダーシップがあります。同社は製造から販売までを一手に担う製造小売業として、効率の良いサプライチェーンを築き上げました。これによりユニクロの服は「低価格と高品質」を両立できています。さらに、柳井社長の強烈な実行力と探究心が、このビジネスモデルを次のレベルへと引き上げています。常に新しいことを求め、全てを徹底的に管理するその姿勢が、ユニクロを一アパレルメーカーから世界的ブランドへと変貌させました。
ユニクロからの学び
では、このユニクロの成功が他の企業の人の学びになるとしたら、どんなことが言えるでしょうか。以下にユニクロからの学びを一般化して挙げてみました。
<ユニクロから学べること>
1.明確な理念を持つこと:他社と何が違うか。ユニクロの場合「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という強い理念です。
2.日常に寄り添うこと:ユニクロの場合、耐久性や保温性に優れたヒートテック、涼しさを追求したエアリズムなど、生活に役立つ商品作りを心がけています。
3.品質にこだわること:ユニクロの場合、低価格でありながら、耐久性、機能性ともに高品質であることにこだわりを持ち続けています。
4.多様性を尊重すること:ユニクロの製品は、年齢や性別、ファッションへの興味に関係なく、多くの人が愛用しています。
5.ストーリーを語ること:広告やSNSで見せるユニクロの商品には、それぞれ背景があります。その話は、企業理念と密接につながっています。
いかがでしょうか。
5つ全部は難しいかもしれませんが、ビジネスの形、規模に関わらず、「企業理念」と「ストーリー」については皆さん誰もが取り組める部分だと思います。
「ユニクロがなぜここまで成功したのか」、「なぜここまで私たちの生活に浸透しているのか」を考えると、その根底にあるのは、同社の一貫した「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という理念なのですね。「ゆるぎない理念(なぜ、これをやっているのか)を持つこと、それをどこまで追求して、どんな手段でストーリーとして発信し続けていくか」、そこに成功のカギがあるのではないかと思います。
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