ストーリーテリングについて語るブログ

タイムスリップした夜

先日、こちらでバイオリニストの古澤巖さんのコンサートに行きました。古澤さんはJALの「JET STREAM」のテーマ音楽などで有名な方ですが、ニューヨークで演奏されるのは実に約40年ぶりだったそうです。

そして、私、偶然にも今から30年近く前、古澤さんのコンサートに行ったことがありました。まさに30年ぶりの再会でした!(直接ご挨拶ができたわけではないですが・・・)

時は遡り、90年代前半。場所は当時まだ新しい文化的スポットだった渋谷のBunkamura。当時の古澤さんは、まだ30代前半で、新進気鋭のバイオリニスト、という印象。それがまだオープンして数年のBunkamuraの空気感にとてもマッチしていたのが印象的でした。誘ってくださったのは、その当時、テニスを一緒にやっていた社会人の方。古澤さんと聞いて、すっかり記憶の片隅に追いやられていた当時の光景が一気に蘇り、少し背伸びをして、渋谷に出かけた日のことを思い出しました。

さて、30年ぶりの古澤さん、今回はカーネギーホール内のアットホームな会場での開催でした。ピアニストの兼益研二さんと一緒に登場されましたが、ピアノとのアンサンブルも素晴らしかったですし、古澤さんの奏でる様々なジャンルの音楽、丁寧に言葉を選びながら英語で語る、とてもハートフルなメッセージが心に響きました。大ホールでやるクラシックのコンサートでMCが入ることは殆どないと思うのですが、この会場では古澤さんのMCで会場が一体感を持つことができ、まるで、お家での演奏会に招待いただいたかのような気分でした。そして、言葉の一つ一つが、音楽の音色とともに心に染み入りました。

古澤さんの選曲は、和楽器を思わせる曲やジプシーの影響を強く受けた曲など、幅広いもので、その音楽スタイルはいわゆる「定番」からは一線を画していました。それが古澤さんの音楽に対するこだわりなのだと感じました。

最後の曲の前のMCで、古澤さんが、1985年以来、約40年ぶりにアメリカに来て演奏ができたこと、この演奏会も仲間が企画してくれたものであったこと、クラシック(バロック)音楽を再度やり直すことの葛藤があったこと、そして会場に95歳の!お母様が来て下さっていること、などを話してくれました。95歳の方が飛行機に乗ってはるばるニューヨークに来られるなんて、何という素晴らしいことでしょう!

そして、古澤さんの長い音楽人生、いつも順風満帆だったわけではないことも、MCを聞く中でわかりました。バイオリニストとしての古澤さんがこの年月の間に、色々と葛藤されたこと、そして、この場で心を尽くしてバイオリンを演奏し、私たちに「心」を届けてくれること、強く胸に響きました。アンコールで演奏した「ニューシネマパラダイス」のメドレーに、私の青春時代の甘酸っぱい思い出も重なり、聴きながら、なんだか胸がジーンと熱くなりました。

今回、私は1日のステージに真摯に向き合う古澤さんの姿から「いくつになっても進化し続けること」、「一人一人に届ける真摯な姿」を教えていただきました。振り返ると、私はこの30年の間、どんな進化をしてきたのでしょう?就職して、会社員を30年近くやっている。海外でもチャレンジしている。そして、結婚して母親でもある。書くことも始めている、そして、そして・・・。

バイオリンの優雅な音色に包まれて、30年前にタイムスリップしたこの夜、私はそんなことを考えながら眠りについたのでした。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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