ストーリーテリングについて語るブログ

「ストーリーテリング」って何?

皆さんは「ストーリーテリング」について聞いてことはあるでしょうか?

「ストーリーテリング」とは、商品やサービスの提案、企業のブランディングなどにおいて、「伝えたいメッセージを物語として語る」手法です。一般的にビジネスの紹介は論理立てて説明することが鉄則とされる傾向にありましたが、最近はスティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツなど、名だたるビジネス界の著名人、TED TALKのスピーカー達がほぼ全て「ストーリー」を用いたプレゼンテーション、スピーチを行っています。今や「ストーリー」のないプレゼンテーションはないくらいです。

なぜ「ストーリー」が人々を惹きつけるのか?
それは、その人と話す独自の「ストーリー」に聞き手が共感、共鳴するからです。そして、そうした「ストーリー」には聞き手の感情を揺り動かす効果があります。感情が揺さぶられ、「(数ある商品の中で)これを買いたい」、「(数ある競合相手の中で)この人から買いたい」という行動に繋がるのです。また、「ストーリー」で語った内容は人々の印象に強く残ります。単なる事実の羅列で伝えるより22倍記憶に残りやすいという研究結果も出ています(スタンフォード大学ビジネススクールのジェニファー・アーカー教授による)。

例を挙げます。
このTED TALKでは「Power Foods for the Brain (脳のためになるパワーフード)」について語っています。講演者は、医師のニール・バーナード氏です。

導入部、バーナード氏は自分の父親がアルツハイマー病の末、亡くなったことを説明します。彼は「人生で起こりうることを全部リストに書いたとき、リストの一番下に来るのは、アルツハイマー病です。誰もこの病気にはなりたくありません。記憶をなくしたら、大切な人も、すべてを失います。」と語ります。

そして、アルツハイマー病になった人は、脳細胞の間に、‎「アミロイドβタンパク質」のかたまりが見えるこを説明します。このかたまりが、アルツハイマー病の最大の特徴であり、80代のアメリカ人の約半分がこの病気を発症します。原因は一般に「加齢と遺伝」と言われています。

そして、次に「脳によくない食事」について説明します。飽和脂肪酸、トランス脂肪酸や乳製品です。「よくない油」を取りすぎると、記憶力が低下するそうです。彼は当時は今よりもっと、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、乳製品などがアメリカ人の「日常」にあったことや、自らの子供時代の食生活などについて語ります。

その次に「では、何を食べれば良いのか?」「他に推奨する方法(運動)」について話します。食事はビタミンEを含む食材(ほうれん草、マンゴー、ナッツ類など)、「色のついた野菜や果物」が良いそうです。1日8ミリグラムビタミンEを取る人は、食べない人に比べると、アルツハイマーのリスクが半減する、と説明しています。遺伝があったとしても、食生活や運動でそれを変えることができると説明しています。

最後に、「私はお父さん、脳に良い食事が見つかったよ、これを食べれば良いんだよ、運動もすれば良いんだよ!と言いたいです。でも、父はもうここにいません・・・。でも、あなたや、私はまだ間に合います。学んだことを取り入れ、脳を守ることができます。そうすれば、もう少し長く、家族が一緒に過ごせるのです。」で終わります。

全体として、ストーリーは以下の流れです。
1.父親がアルツハイマー病の末、亡くなる
2.なぜ、人はアルツハイマーなどの記憶障害になるのか?その原因となる食事やその傾向について
3.Power Foodや運動習慣の勧め
4.今からでも食習慣は変えられる

この講演もそうですが、TED TALKなど、今や世界中のスピーチのほとんどが、「ストーリーテリング」の手法で自らの体験を語っています。それも輝かしい、格好良い思い出、というより、どちらかというと良くなかったこと、失敗した経験を語り、聴き手はそれに対し、親近感、共感を憶えます。

導入部でだんだん記憶が衰え、晩年は自分の息子たちのことも忘れてしまった父親。今回のスピーチでは、アメリカの田舎町の5人兄弟の中で育ったバーナード氏は、ベーコンの脂を保管してまた使うような環境で育ったことを語っています(当時はごく「当たり前」のことでしたが、今ではそれが脳にも体にも悪い「Saturated Fat(飽和脂肪酸)」であることは有名です)。

そして、最後のところで再び、「これを知った今、父に『お父さん、脳に良い食事が見つかったよ、これを食べれば良いんだよ、一緒にスニーカーを履いてちょっと外で運動しようよ!』と言いたいです。でも、父はもうここにいません・・・。でも、あなたや、私はまだ間に合います。学んだことを取り入れ、脳を守ることができます。そうすれば、もう少し長く、家族が一緒に過ごせるのです。」と結びます。

聴衆はそれを聞いて、我が事のようにしんみりします。
「そうだな、自分はまだ習慣を変える時間は残っているな」と感じます。この時点で、いつの間にか、この話は「スピーカーの体験」だけでなく、「(聞き手の)自分ごと」になっているのです。それが「ストーリー」の力です。

私は今、「夢を叶える話し方講座」を主宰する山本光子さんのところで「ストーリーテリング」について学んでいます。まだ学び始めたばかりですが、同じように学ぶ意欲的な受講生の仲間と一緒に、自分のこと、仕事のこと、家族のこと、色々な出来事を「ストーリーで語る」ことを練習しています。

もともと、私自身は「書くこと」の方が好きでしたが、たまたま受けたセミナーで「ストーリーテリング」の魅力に惹かれ、学び始めました。何よりも「話すことだけで人生を切り開いてきた」という光子さんの言葉通り、その人の言いたいこと、強みを瞬時に組み立てる技術、そしてその心に響く伝え方はまさに「神業」だったからです。そこが自分のやりたい「人の強みを文字で表現する」ことと繋がり、習得したい、と強く思いました。山本光子さんはこちらで体験セミナーを実施されていますので、ご関心ががあれば、是非参加してみて下さい(想像以上の中身の「濃さ」に、きっとビックリされると思います!)。

書くことも、話すことも、どちらも出来事の組み立てや言葉選びがカギになる、という点では共通します。そして、大事なのは全体の流れの構成と「自己開示」です。ただスラスラとよどみなく話せば良いというものではなく、自分の経験(どちらかというと失敗した、とかうまくいかなかったこと)を交えて、そこから何を学んだか、どの部分がこれから話すことに繋がっているか、ということを組み立てていきます。

頭の中で構成を考えても上手に話せるものではないし、逆に上手に話せても、心が伴わないと、聞き手には響きません。そういうわけで、ストーリーテリングはなかなか手強いです!でも、それだけにとてもチャレンジしがいがあります。今後もその魅力について少しずつ、紹介していきます。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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