ストーリーテリングについて語るブログ

「奇跡のリンゴ」で学ぶ!ビジネスシーンでのストーリー展開

前回はビジネスシーンで有効なストーリーの種類について、ご紹介しました。今回は、なぜビジネスの場においてストーリーを使うと良いのか、他社や他の製品・サービスと差を付けられるのか、について書きたいと思います。また、それらを受け、具体的にどのようにストーリーに落とし込み、展開していくのかについてもご提案します。

なぜビジネスシーンでストーリーを使うと良いのか

1.人の感情が動き、共感を得られる
ストーリーを目にすると、人の「感情が動き」、共感が得られます。人は単なるデータではなく、その背景にあるストーリーによって、共感したり、同情したり、と感情が動きます。さらにはその商品、サービス、あなたのファンになることもあります。

2.オンリーワンの存在になれる
ストーリーを語ることで、その商品・サービスを差別化し、「その他大勢」とは違う「オンリーワン」のものにすることができます。なぜなら、例え同じような商品・サービスであったとしても、その背景として語るストーリーは他社にはない、唯一無二のものだからです。

3.記憶に残る
ストーリーがあると、単なる商品・サービスの説明に比べて、圧倒的に人の心に残りやすくなります(スタンフォード大学ビジネススクールのジェニファー・アーカー教授によると、ストーリーで語ると、そうでない場合の22倍記憶に残る、と発表しています。)。情報が記憶に残ると、消費者はその商品を他の人にも勧めやすくなり、口コミが広がります。

具体例を挙げて上記を1つずつ見ていきましょう。
例えば、ストーリーの世界で有名な青森県の木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」の話があります。これは、木村さんが当時「絶対無理」と言われた農薬を使わないリンゴ作りに8年間をかけてトライし続けた感動のストーリです。木村さんは当時のリンゴ農家では当たり前だった農薬により奥さんの肌が荒れてしまう状況を見て、「無農薬でのリンゴ作り」という取り組みを始めます。でも、その道は決して平坦ではなく、長年病気と害虫との闘いが待ち受けていました。

無農薬を追求するあまり、自分の農園だけでなく、他の農園にも虫がついてしまうことを迷惑がられ、地域で孤立したり、長年の極貧生活の末、最後は畑を差し押さえられるところまで。こうしてギリギリのところまで追い込まれた木村さんは、山の上で偶然に打開策となる「土」を見つけます。この土が救世主となり、木村さんの「奇跡のリンゴ」が生まれました。

このストーリーを聞き、人は何度「もうダメだ」と思っても、無農薬を追求し続けた木村さんのストーリーに感動・共感して、どんなに高くても彼のところでリンゴを買いたいと思います。なぜなら、木村さんのストーリーは、彼にしかない「オンリーワン」のものだからです。たとえ、世の中に、同様の「無農薬のリンゴ」があったとしても、このストーリーがあることで、彼の作るリンゴは唯一無二の存在になっています。そして、この「奇跡のリンゴ」の話は圧倒的に人の心に残ります。ちなみに、このストーリーはあまりに有名になり、映画化までされています。

効果的なストーリー5選

前回お伝えしたビジネスシーンでのストーリーですが、この木村さんのエピソードを例にすると、以下の切り口でストーリーを作ることができます。

1.「奇跡のリンゴ」自体にフォーカスしたストーリー(バリューストーリー)
長年病気や害虫にさいなまれながら、木村さんが目指した「無農薬のリンゴ=奇跡のリンゴ」が生まれるまでのストーリー。ストーリーを聞き、お客様がこの商品を「他とは違う、オンリーワンのもの」と認識して欲しくなります。

2.木村さんが木村さん自身の生き方やその考え方にフォーカスしたストーリー(ファウンダーストーリー)
木村さんがどういう人間だったのか、その木村さんがなぜ無農薬のリンゴを作ろうと思ったのか。そしてそれを作るまでの波乱万丈の人生を語ったストーリー。お客様、社員(スタッフ)が木村さんの「人となり」を知り、共感し、ファンになります。

3.木村さんのリンゴ作りにかけるポリシーを共有するストーリー(パーパスストーリー)
木村さんが、どのようなポリシーで無農薬のリンゴを作って来たのか、それを共有するストーリー。例えば無農薬・無肥料でのリンゴ栽培を通じて「持続可能な農業を通じて、次世代に美しい地球を残すこと」を目指していること、などを伝える。お客様向けだけではなく、そこで働く社員(スタッフ)、「将来的に同社と取引をしたいと思っている企業」に向けてもアピールすることができます。

4.お客様のストーリー(カスタマーストーリー)
木村さんのリンゴを食べた人たちの体験談を集め、その良さを伝えるストーリー。どのような点が良かったのか、他社製品と違うのか、食べた結果何が起こったか、などを伝える。これを見たお客様が「自分も買ってみようかな」と思ってもらうことができます。

5.社員(スタッフ)のストーリー(サクセスストーリー)
木村さんの無農薬リンゴ作りに従事する、社員(スタッフ)の目線からのストーリー。製作、販売の過程で起きた問題、それに対して心掛けた改善策など(例:従来配送に時間がかかっていた問題を〇〇により解決した、リピーターのお客様のために△△を実施した、など)を伝える。お客様の関心を引いたり、社員(スタッフ)のモチベーション向上に役立ちます。

いかがでしょうか?「無農薬リンゴ」という同じ一つの題材でも、切り口によって色々な形でストーリーを作り、表現することができますね(ちなみに、上記5つはあくまでも、私が例として考えた分類であり、実際に木村さんがこの5種類全部を作っている、というわけではありません)。

こちにあるように、ストーリーは何も一種類である必要はなく、その目的によりお客様、潜在取引先、社員(スタッフ)など、あらゆる人たちに届けることができます。あなたも、今日から「色々な切り口のストーリー作り」に挑戦してみませんか?

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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