Clubhouseの人気Room「耳で読むビジネス書(耳ビジ★)」で特集した山口拓朗さんの「1%の本質を最速でつかむ『理解力』」を読んで。
「理解したつもり」を卒業する
全ての仕事、人間関係、行動は「理解すること」からはじまると言う。でも、私達は日頃のコミュニケーションでお互いの「意図していること」を100%くみ取って理解し合えているだろうか?私の場合、まだ答えはNOだ。でも、それができるようになれば、人より一歩も二歩もリードすることができる。その能力を高めることで「人生全体に大きなリターン」をもたらすとしたら・・・やらない手はないだろう。この本は「理解したつもり」という壁を乗り越えて、深みへと踏み込む力付けることを目的としている。
「理解の箱」がカギ
人は物事を理解するとき、「理解の箱」を通して物事を見て、判断したり、感じたりしているという。「理解の箱」は脳の中の、「脳内ライブラリー」に格納されており、人は都度必要な箱を使って判断して、行動する。経験を積んだ人ほど、「脳内ライブラリ―」の中に多種多様な「理解の箱」が格納されているイメージである。
例えば、同じ小説を読む、という行為をしても、「ストーリー」という箱しかない人は、ストーリーの「ある・ない」、「おもしろい・つまらない」という点を基準にその作品を判断することになるが、「感情描写」、「社会問題」などの箱を持っている人は「登場人物の感情の変化に感情が揺さぶられた」など、「ストーリー」以外にそれらの箱を通しても、作品を見ることができる。
「理解の箱」が多い人ほど、物事に際して、スピーディで的確な判断や多面的な見方をすることが可能になる。例えば、同じ仕事をするのでも、ベテラン社員と新入社員では、ベテラン社員の方がずっと上手にできる。それは、ベテラン社員のこれまでの経験や知識ー企画の立て方、商品開発のプロセス、クライアントとの接し方、営業の仕方等々が「理解の箱」となり、脳内に格納されているからだ。「1を聞いて10を知る人」というのはこの「理解の箱」が多く、活性化している人のことだ。
「理解の箱」をどんどん育て、活性化する
「理解の箱」は経験とともにどんどん増える。その時、脳内ライブラリーにすでにある「理解の箱」との関連性を考え、箱を増やしたり、同じ箱に入れたりするイメージだ。
この「理解の箱」たちはそのまま脳内に入れておくだけではうまく使えない。あらゆる場面で箱を「引き出して」使う(=活性化する)ことが理解力を高めるカギとなる。この活性化のために有効なのは、「聞く」、「読む」、「体験する」、「思考する」の4つのアプローチだ。一つ言葉を覚えたら、あらゆるアプローチでいつもその言葉に触れていると、どんどん活性化していく。
体験、音読のパワー~五感のチカラ
「理解の箱」を活性化して、取り出しやすくするには、五感のチカラを使うことが有効だ。
理解力の中でもっともパワフルなアプローチが「体験する」ことだという。例えば海外旅行をしたことがない人に「イタリアの魅力を語って下さい」と言っても、テレビや雑誌で見た、表面的なことしか言えないだろう。でも、実際にイタリアに行くという「体験」をした人だったら、イタリアの景色、食、人々などについてビビッドに語ることができるし、説得力が全く違ったものになる。なぜなら体験は「五感」を使って行うため、印象や記憶に残りやすく、脳内ライブラリーからも消去されにくい傾向にあるからだという。今後何かを体験する時も意識的に五感を意識的に使うと記憶に残りやすい。
また、同じ「読む」という行為でも「音読」をすることは非常に効果的だという。大人になって音読をする人は少ないが、「音読により脳内を文章が通過していく」効果があり、思っている以上に効果的だという。
「言葉」の理解ー言葉を自分のものにするには?
すべての理解の第一歩が言葉の理解である。言葉を理解するためにも、アウトプット(話す・書く)するためにも「言葉」が必要であり、そのためには「わからない言葉」に出会ったら、そのまま放置せず、調べて、自分のものにすることが重要だ。そうすることで意味と言葉が結びつき、脳内ライブラリーに「理解の箱」として格納される。そして、日常の場面で格納した言葉を進んで使うことで、どんどん活性化していく。
読書も理解力を高めるうえで有効である。例えば読書をする時は以下「アクティブ・リーディング」の手順で読むと能動的に読書し、自分のものにすることができるという。
<アクティブリーディングのポイント>
①自分がこの本を読む目的を感げながら読む(大枠での読み方)
②目次や小見出し、タイトルに事前に目を通す(読む前の準備)。
③読書中は自分の「理解の箱」と結びつけながら「なぜ?」「何が?」「どういう意味?」などツッコミを入れながら読む。
④記憶に残したいところや大事なポイントに線やマーカーを引いたり、大事なところはメモを取る。
⑤知らない言葉は、その場で調べる。
⑥読み終えたらアウトプット(書く・話す・説明する)する(読書後の行動)。
登場人物を追体験ー小説、映画の効能
本の中でもとりわけ小説、そして映画に触れることも、理解力を高める上で有効であるという。小説や映画にはストーリがあり、ストーリーを理解することは前後の文脈を理解することになる。この文脈を読む力は実生活でも役に立ち、単一場面の理解にとどまらず、背景に「何が起きているのか?」を注意深く観察し、推察する力がつく。また、小説や映画は作品を通じて、他人の体験を自分の体験として「追体験(作品などを通して、他人の体験を自分の体験として生き生きと捉えること)」をする機会を与えてくれる。物語の中で色々な感情を持つ人格を体験することにより、実生活でどんな人と出会っても、「こういう人もいるよね」とフラットな気持ちで受け止められるようになる。
スマホ脳ー「理解したつもり」にサヨウナラ
私達現代人は、目的地までの経路をアプリが教えてくれたり、自分の嗜好にパーソナライズされたニュースや商品の情報が提供されるスマホ等で情報を「受動的に」受け取る状況(いわゆる「スマホ脳」)に慣れてしまっている。そうすると、タイムラインを盲信し、何かを「理解したつもり」になってしまう。こうした状況では、目に見えない文脈を読んだり、主体的に理解や考えを深めようという意識が欠けてしまっている。そして、そういう人ほど、「自分は考えている/正しく理解している」と思い込んでしまうという。でも、この自ら考えることをサボってしまう受動状態では、どんどん脳の機能が衰えていくという。「意識して脳を使う」ことは理解力を高める上でも、とても大切だ。
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