ストーリーテリングについて語るブログ

スピーチの魅力を高めるには?~「英語朗唱」からの学び

以前「英語朗唱」というスピーチに取り組んでいるお話をしました。昨年5月から始め、実は昨日3回目のリサイタル(受講者全員の発表会兼コンテスト)で自分の出番を終えたところです。毎回チャレンジする度に色々な学びがあるので、今日はそれについて書くと共に、今取り組んでいる日本語でのスピーチに応用できる点について考えてみたいと思います。
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なぜ朗唱?

もともと朗唱を始めたのは「英語をもっと自信を持って話せるようになりたい」と思っていたことがきっかけでした。英語圏に数年住んでいて、普通に「何となく」は話せるけど、いつまでこの「何となく」は続くのか終わりが見えず、もっと確信が欲しかったというか。これまでやってきた英語の勉強も、どちらかというとテストの勉強ばかりでした。そんな時、ちょうど去年のGW中に石渡誠先生のFacebookライブを見て、思い切って飛び込んでみました。

 

現在石渡先生の学校で実施している「英語朗唱(Recitation)」はオバマ前大統領が2016年に広島を訪問した際の全17分程度のスピーチで、こちらを4ヶ月1タームで、何回かに分けて実施します。スピーチ冒頭から始まり、現在は「Obama Hiroshima 5」として、5回目のタームです。普通に読むと2分前後のスピーチです。

 

学び方の手順として、最初は「モデリング」といっていわゆる「完コピ」を目指します。動画教材で学習し、先生からの直接受講の機会に発音やイントネーションの細かいところまで指摘され、直されます。生徒同士の学び合いも活発で、ベテランの生徒さんから、先生顔負けの指導を受けることもあります。

このように徹底的にまず「音」を学んだうえで、次に初めて「単語の意味や用法」を学びます(こちらも動画教材あり)。最初は意味が(完全には)分からないまま、音だけを学ぶのは気持ちが悪い気もするのですが、後から見ると、「まずは音、次に意味」という順番は「英語を英語のままで理解する」ということができるので、理にかなっていたと思います。

そして最後に、スピーチ全体を見て、スピーカー(この場合は大国の現役大統領)がどういう立場で、誰に向けてスピーチをしているのか、を考えて落とし込んでいきます。

この朗唱を通して私が身についたこと(現在進行形のものも含み)は色々あるのですが、今日はその中で、4つの点について書きたいと思います。

〇〇として、聴衆とつながる

英語のスピーチというと、日本では多くの人が「正しい発音」や「文の正確さ」に頭がいくと思います。確かにそれも大事ですが、「そこだけ」にフォーカスしてしまうと、一方通行のスピーチとなり、伝えたいメッセージの魅力が半減してしまいます。

石渡先生は、スピーチにおいて最も大切なのは、「相手とどうつながるか」だと言います。スピーチは一方的なものではなく、「コミュニケーション」でもあるからです。会場で(今はオンラインもありますが)、聴衆とどうコミュニケーションを取り、伝えたいメッセージを伝えていくか、という「つながり」を持ちながら話すことが大切なのですが、それを意識できている人はあまり多くありません。

意識して話すためには、いきなり始めずに、「誰が」「誰に」「何のために」「何について」話をするのか、という点が聴衆に予め伝わった形でスピーチができると良いですね。

例えば、今回の「Obama Hiroshima」のスピーチで言うと、以下のようになります。

誰が:
現役アメリカ大統領が
誰に:広島の人々に対して
何のために:世界平和を実現するために
何を:核を保有する大国の一つとして、自国に何ができるのか?我々はどうすべきか

この前提を考えてスピーチをすると、自ずと「会場と一体感を持とう。伝えよう」という気持ちでスピーチが始められるはずです。逆にそれなしに一方的に話し続けるとしたら、無機質な「一方通行」のスピーチになります。

全体の構造を考える

音をしっかり学び、意味を掴み、スピーチをする自分の立場や目的を理解できるようになったら、次は「全体の構造」を考える段階です。

例えば今回学習した「Obama Hiroshima」のパートであれば、このような流れで4つのパートに分けて考えられます。

・世界一の核保有国であるアメリカ大統領が核兵器の廃絶について決意を語る。
・世界には銃や爆弾など、核兵器以外の問題も世界各地で起きている。

・我々は戦争に対する考え方を変える必要がある。そのために、紛争を回避すること、私たちの相互依存は暴力的な競争ではなく、平和的な協力の理由として見ること、国の価値を破壊力ではなく、何を生み出せるかで定義すること、が必要だ。
・同じ人類として、より良い世界にするために、私たちの心の繋がりを再構築し、もう一度考え方を変えていこう。


この大まかな流れを意識できると、読むときにも「メリハリ」をつけることができます。つまり、どこが「転換」のポイントか、どこを「主張」すべきなのか、その主張のポイントは何点あるのか、などです。特に英語朗唱の場合は自分の作成したスピーチでないので、いかにこのスピーチにおけるObama元大統領の立場を理解し、主張している内容を、自分の中に落とし込むか、が大切です。

自分の「パーソナリティ」を生かすということ

こうして、スピーチの背景・目的や構造を理解した上で、最後に大切なのは、それぞれの「パーソナリティ」を生かす、ということです。

私たちは普段、日本語での会話では、無意識のうちに自分のパーソナリティを表現しているはずです。自分の持つキャラクターを反映させたり、声の「トーン」を使って、さまざまな感情やニュアンスを表現しています。

この「普段の(自分の)パーソナリティ」や感情表現を、英語スピーチにも活かすことができれば、よりオリジナリティーのある、より生きたメッセージを伝えることができるようになるはずです。

多くの人が英語のスピーチで陥りがちなのが、「間違ってはいけない」、「発音を少しでもきれいにしよう」と意気込み、結果として淡々と読み上げてしまうことです(私にもたくさん経験があります・・・)。これでは、どうしても無機質で人間らしさに欠けた印象を与えてしまいます。

本来、スピーチはただの情報伝達手段ではなく、自分の思いや感情を相手に伝える大切な機会です。そのためには、自分の「パーソナリティ」を生かし、心の通った表現を心がけることが大切です。たとえ自分のオリジナルのスピーチでなくても、その読み手のキャラクターを反映させ(今回の場合、「一国のリーダー」として)、自分の伝えるべきことを伝えつつ、「普段のあなた独自の色」を入れるのがコツです。

例えば、普段のあなたが優しくチャーミングだったり、ユーモラスなキャラだとしたら、「一国のリーダー」らしくありながらも、ちょっとその「優しさ」や「ユーモア」が垣間見えるスピーチだと良いですね。これ、「言うは易く行うは難し」で、私も未だに挑戦中なんですが・・・。
(「英語朗唱」の「沼」にはまる人が多いのですが、まさに皆、この段階でああでもない、こうでもない、と試行錯誤していることかと思います。)

この点は、特に人のスピーチの場合、あまり意識することがないかもしれませんが、これができるようになると、自分のスピーチをする上でも、同じことを意識して、スピーチに反映させることができ、聞き手があなたの「温度感」を感じることができ、聴衆との距離がグッと縮まります。

アウトプットの価値は無限大

前回のブログでも書きましたが、今回の朗唱でも、仲間との定期的な練習会に助けられました。私の場合は時差もあり、全ての練習会には参加できなかったのですが、前回から続けている「朗唱×瞬読」というコミュニティでは、メンバーそれぞれがレベルアップして、練習の仕方やフィードバックもますます進化しています。

何でも言いやすい関係性がなせる業なのか、とにかく「上下関係、レベルの差一切関係なく、言いたいことを率直に発言できる」環境が素晴らしく、私も遠慮なく、思ったことを言っています。これが練習においてはとても大切で、「私なんて下手だから」「始めたばかりだから」と躊躇することがないのです。

そして、できる人ができることをどんどん価値提供しています。毎週zoomを立ち上げてセットしてくれる人、PCスキルを駆使しして資料を作ってくれる人、メッセンジャーに仕入れたことをアドバイスしてくれる人、盛り上げてくれる人・・・。本当にありがたい環境です。

私はここ1ヶ月ほどは「マニアックTIPS おさらい会」と称して、皆さんのスピーチにお節介なコメントをしてフォードバックする会を週1で開催していました。こんな風に「先生」がいなくても、仲間で助け合って上へ上へと一歩ずつ上っていけている気がしますし、「教える人が一番学ぶべる」という言葉通り、私も皆さんにアドバイスすることで、自分の頭の中の知識を言語化でき、知識が定着するようになりました。この経験から、「私なんかでいいかな?」と迷う心があったとしても、どんどんアウトプットすることが大切だと実感しています。

 

学びを生かして

このように、ますます奥深い「英語朗唱」ですが、自分で挑戦しながら、毎回、学ぶことが一つずつ増えていく印象があります。今回書いた4つのポイントも、今回3回目の挑戦で初めて言語化して腑に落ちたものも多いです。

 

そして、気が付いたことは、これらの点はどれも日本語のスピーチにも応用できる!ということです。

①スピーチの設定、②全体の構造を考える、③自分のパーソナリティを生かす、④仲間とブラッシュアップする、どれも生かせることばかり!そして、日本語でやっている「発声と発想の一致」や「お腹のポジションで話す」ことは英語朗唱でもまさに必要なポイントです。スピーチに国境なし!

こんな英語朗唱での体験をヒントに、私は5月から、スピーチ(日本語)について一緒に学び、練習するコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」を始めることにしました。

一人ひとりが自分の想いを伝えることができるようになることで、自分に自信を持てる人を増やしたいと思っています。そして、仲間との練習やフィードバックの場を通して、学び合い、お互いブラッシュアップしていけたら、という思いも込めて、あえて「道場」というネーミングを付けました。

まだまだ手探りですが、楽しみながら、一緒に学び「スピーチが特技」という人を増やしていきたいです。そして、この「英語朗唱」で学んだことをたくさん、取り入れていきます。
4月28日(日)にこんな体験会をやる予定です。ご興味を持って下さった方、お気軽にご参加下さい!

Peatix
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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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