音声型SNSの番組「耳で読むビジネス書」で登場した佐藤政樹さんの『人を「惹きつける」話し方』。こちらで紹介されていることが、日頃勉強している「ストーリーテリング」や「話し方」とも重なるところ大だったので、シリーズでご紹介したいと思います。
私は今まで、「ストーリー」や色々なことを語る時、フラットに聞こえてしまいがちでした。話の中身やそのにもよりますが、アナウンサーのように、綺麗に読むことを意識し過ぎて、人の心に訴えるような話がなかなかできないのがコンプレックスでもありました。でも、この本を読んで、その理由や克服法がわかったような気がしました。
ありのままの自分
著者の佐藤さんは23歳でバレエを始め、28歳であの「劇団四季」のオーディションに合学、最後は主役まで務められた経歴を持ちます。幼い頃からバレエ、歌、演劇をして劇団員を志す人が多い中では異例の経歴の持ち主です。この本ではその佐藤さんが四季での経験を通じて学んだことを余すところなく、伝えて下さっています。
本書では第1章で「最も心に響くのは、上手にスラスラ話す人の言葉ではない」ということが書かれています。たとえ口下手でも自分の言葉で等身大の自分を表現した方が、聞き手のこ頃を動かすのだと。これは「話すなら上手にやらなくては」「ミスしないようにしなくては」という私たちの「常識」を覆す言葉ですね。
確かに、これまでストーリーテリングの勉強をしていて、色々な人のストーリーを聞いてきましたが、正直に胸の内を明かしてくれた人のストーリーほど、心に響きます。反対に、「完璧に、用意された」ストーリーは隙が無く、少し面白みがないものです。本書では佐藤さんが劇団の主宰者である故浅利慶太さんに「上手くやろうとするな」、「別の自分を演じるな」と言われたエピソードが書かれています。自分を偽ったり、盛ったりするのではなく、余計な部分、ウソをそぎ落とした「ありのままの自分」を出して初めて人の心が動かすことができるのだそうです。
これは舞台だけの話ではなく、ビジネスシーンや日常生活でも一緒です。例えば、自宅に営業マンが物を売りに来た場合、歯の浮くような美辞麗句を並べ立てる人と、不器用だけれど実直に説明してくれる人だったら、あなたはどちらから買いたいと思うでしょうか?答えはわかりますね。まず私たちは「かっこよく、スラスラ話さなくてはいけない」という呪縛から解き放たれる必要があるようです。
なぜ、その言葉を話すのか?
本書でもう一つ説明されているのが「なぜ、その言葉を話すのか?」を常に念頭に置くことです。たとえば、同じ「ありがとう」を伝えるのでも、どういう文脈で、なぜ「ありがとう」というのかを理解している、いないでは、相手の伝わる印象がまったく変わります。伝わり方についても、ただ、言葉を棒読みしているだけなのか、感情をこめた「ように」話しているのか、本当に感情が入って話しているのか、という違いがあります。
なぜ、何に感謝しての「ありがとう」なのか、その「実感」が伴っていると、言葉が、自分の内側からあふれるように出てきて、人の心に伝わります。一致させるべきは「発声」と「発想」だそうです。言葉を発する理由を理解し、自分が納得した上で発すると両者が一致します。
ちなみに、経験談はただただ「淡々と語る」のがポイントだそうです。大げさに感情を高ぶらせると却ってウソっぽく見えてしましますが、声を出す理由が自分で「腹落ち」していると「実感」して伝えることができます。
私にとって、結構この事実は衝撃でした。だって、古くは小学校時代から今までの40年以上、文章は「上手に、ミスなく」読まないといけないと思っていましたし、経験談は「感情豊かに」語るべきものだと思っていたからです。でも、感情は「付ける」ものではなく、自然に「実感」として湧き出るものなのですね。
次回はこの「腹落ち」についても、詳しくご紹介したいと思います。
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