ストーリーテリングについて語るブログ

一つのストーリー×複数のメッセージ

先日はストーリーの中における「ワンメッセージ」の重要さについての記事を書きました。今回はその「ワンメッセージ」が1つのストーリーから複数できること、また、その場合の使い分け方などについてお話ししようと思います。

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Sさんのストーリー~「え?私がセミナーを!?」

今日はSさんについてお話しします。Sさんはストーリーテリングの講座生仲間です。彼女は長年「これまで自分には楽しいことなんてなかった」が口癖でしたが、講座生として一緒に学んでいく中で、日を追うごとにその表情が変わっていきました。もともと笑顔がチャーミングな方でしたが、以前は下がりがちだったその口角が、今ではまるで形状記憶されたかのように上がり、ニッコリと笑う姿が増えていきました。そんな彼女、どちらかと以前は「人前で話すのは苦手」という方でした。でも、日に日に積極的になり、講座での発言も増えていきました。さらには後輩のサポートまで買って出るという姿勢まで。私たちはそんな彼女の前向きさを見習うとともに、いつも刺激を受けていました。

さて、そんなある日、講座中のとある発言がきっかけで、Sさんがその1ヶ月後に「コミュニケーション」に関するセミナー(先生のコミュニティ内での)を実施することが決まりました(今思うとこれは先生の「愛の無茶振り」でもありました)。最初それを聞いた時は、彼女も私たちも「えー!!」とビックリ。でも、先生は言いました。「日にち決めましょう、Sさん、いつにしますか?」と。こうなると、もう後には引けません。

それから1ヶ月、「何度も逃げたくなった」とSさんは後述していますが、結論として彼女は逃げませんでした。そればかりか、仲間に協力をしてもらい、zoomの有料アカウント取得、画面共有の仕方、講演の練習など、日々彼女は必死に努力しました。「あんなこと言わなければ良かった」と思いながらも、Sさんは「先生と約束したから、皆の前でやると宣言してしまったから、やり遂げよう!」という決意がありました。

Sさんが話し方の練習をしていると、今まで全く注目しておらず、どちらかと言うと「うるさいな」とすら思っていた、TVショッピングのアナウンサーの話し方にも注意が向くようになりました。「ああ、こんなに話し方に抑揚をつけているのね、なるほど、確かにわかりやすいわ!」というように。それ以外にも、街頭演説の声、道行く人の声など、色々な人の話し方が急に耳に入ってくるようになったのは不思議です。

そうして迎えたセミナー当日、彼女は堂々と45分間の講演をやり遂げました。彼女の話し方はとても滑舌がよく、テンポ、抑揚も申し分ないものでした。緊張していることは伝わってきたけれど、自信をもって(腹をくくって?)話す姿には聞いている誰もが驚きと感動を隠せませんでした・・・。拍手喝采、その後の感想のシェアタイムはSさんの雄姿を褒め称える声でいっぱいでした。

2つの「ワンメッセージ」

さて、この経験からSさんが学んだことは何でしょう?以下のように2つのメッセージが考えられると思います。

ワンメッセージ(その1):何事もやればできる
このストーリーから、まず伝えたいメッセージは、「何事もやればできる」ということです。Sさんは1ヵ月間の努力の結果、自分でも驚くほど成長しました。最初は「そんなの無理、自分にはできない!」と思っていたことも、努力と色々な仲間の協力の結果、できるようになったのです。このことから、彼女は何事にもトライする大切さを学びました。

ワンメッセージ(その2):意識が変わると、見える景色が変わる
その他に、このストーリーからは「意識が変わると、見える景色も変わる」というメッセージも伝えることができます。Sさんは話し方の練習を通じて、以前は「うるさいな」と思っていたテレビショッピングのアナウンサーの話し方や街中の人の話し方にも注目するようになりました。これは「話し方」の練習をしたからこそ、意識が向くようになったのです。

どのメッセージを選ぶ?

こんな風に一つのストーリーからも、複数のメッセージを伝えることができます。今回のSさんの例では、エピソードとして話の中にそれぞれのことを入れても、意識すべきなのは「何を一番伝えたいか」、「何にフォーカスしたいか」です。

もし今回「何事もやればできる」ということを伝えたいとしたら、そこにフォーカスを当てた話の構成をしましょう。例えば、こんな風に最後を締めくくりします。

「今回のことで、私が伝えたかったことは『何事もやればできる』ということです。最初先生から『1ヶ月後にセミナーを』と言われた時は、全力で『できない!」と思っていました。でも、こんな私でも、1ヶ月練習をして、仲間に付き合ってもらって、努力をした結果、できないと思っていたことがちゃんとできたのです。私は『できない』とやらずに逃げていただけでした。このことから私は何事にもチャレンジすれば、結果がちゃんと返ってくる、ということを学びました。」

「意識が変わると~」の方はこんな感じです。

「今回のことで、私は『意識が変わると、見える景色が変わる』ということを学びました。私は以前、アナウンサーとか人前で話す人というのは自分と別世界の人だと思っていたのです。ましてやTVショッピングのアナウンサーの人に至っては『なんでこんなに大げさに話すんだろう』とまで思っていました。でも、実際に自分が人前で話す側になることで、自分の中の意識がガラッと変わりました。そうすると、今まで気に留めていなかった、こうした『話す』人たちの姿や声が耳に飛び込んでくるようになったのです。まさに見える景色が変わったという感じです。」

使わなかった方のメッセージは?

ここで、注意してください。全てのメッセージを一度に伝えようとすると、折角のメッセージがぼやけてしまいます。例えば、今のこの2つのメッセージを、このボリューム感のまま1つのストーリーに入れてしまったら、「結局、何を一番言いたかったんだろう?」となってしまいますよね。

だから、ストーリーを語る時は「今、何を伝えたいのか」その時の「メイン」をしっかりと決めることが大切です。そして、複数のメッセージが混在しないように、しっかりと「その話のメインが何なのか」を意識することを忘れないでくださいね。そうすれば、きっと人に「伝わる」ストーリーになります。

ちなみに「メイン」にとならなかった方はどうなるのでしょう?
大丈夫です。切り口をちょっと変えれば、別の機会で使うことができます。だから、1つストーリーを作り、「ワンメッセージ」を考えたら、「他に言えるメッセージはないかな?」を考えてみてください。そうすることで、確実にあなたの「ストーリーのネタ」を増やしていくことができます。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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