ストーリーテリングについて語るブログ

「今だけ」の時間

この秋から子ども達が寮生活(NY郊外)を始めました。夫が帰国し、私が通勤をしながら送迎などができないため、入寮したのです。それを機に私は職場に近いマンハッタン暮らしを始めました。まだ環境に慣れないみたいで、娘からはちょこちょこ連絡が来ます。数日連絡がなかったりすると、「大丈夫かな?」って思うのですが、「便りがないのは元気な証拠」なんて自分に言い聞かせてみたり。

でも、まだ14歳。初めて一人でやることが山ほどあるし、初めての共同生活でストレスもあるのだろうと思います。私自身が寮生活を経験したのは20歳を超えてからの留学時代だけだし、しかも個室だったから、今の娘の環境はそれよりずっと大変だろうなと想像できます。家にいた時は好きな時間に寝て、掃除も洗濯も全部親任せだったもんね。

新しい学校生活と寮生活が同時に始まった娘は、友人関係でも悩むことが多いようです。彼女はもともと器用な方じゃないし、その上に海外と日本を行き来する生活が続き、「自分の根」を張る場所が見つけられないまま今に至っている気がします。なので、新しい環境での人間関係に戸惑うのは想像してたけれど、やっぱり悲観的な報告が続くと、親としては胸が痛みました。

「日本の学校に通わせてあげた方が幸せだったのかな」とか、「甘やかし過ぎたかな」、「もっとしっかり育ててあげればよかったのかな」と親としての自分を責めることもありました。そして、いつの間にか娘と自分の子供時代と重ねて、勝手に苦い思い出が蘇ったり。娘と私は違う人間なのに、自分の中で「うまくいかなかった記憶」だけが思い出されるのはなんだか辛かったのです。そんな気持ちを夫や仲間に相談したこともあります。

でも最近は、少しずつ娘も「サバイブしているかな?」という感じが見えてきました。そして、ある日ふと気づいたんです。「あれ、なんか男の子の話してる?」って。これってもしかして…、恋バナ?

はっきりとは言わないけど、どうやら気になる子もいるみたいです。でも、こういう話って、普通親にするかな…?少なくとも私が14歳の頃なんて、絶対に親には言わなかった。私が秘密主義だったのか、娘がオープンすぎるのか…。それとも、そういう話を気軽にできる友達がいないのかな?と(またいつもの悪い癖で)胸がチクンと痛んだり。それとなく、友達には相談しないのか聞いてみたら、「言ったら絶対にいじられるから」と娘。ああ、なるほどね。

でも、ふと気づいたんです。娘は「母親に恋バナを話す」っていう、私が以前経験できなかったことをしているし、私は「娘に恋バナを話してもらう」という、私の母ができなかった経験をさせてもらっている。これって、もしかしたら、すごく特別なことなんじゃないかと思えてきました。

そして、こんな時期はきっと、長くは続かない。14歳って微妙な年頃だけど、今、娘が一番頼りにしてくれているのは私なんだと思うと、なんだか愛おしい気持ちになってきました。私と娘のこの関係がいつまで続くかわからないけれど、私を頼ってくれる今の時間を大切にしよう、そんな風に思えてきました。

ちなみに、同じく秋から寮生活の18歳の息子はというと、私の住む家には8月以来、一度も戻ってきていません。「いろいろ忙しい」らしく、先日も友達とわが家の近くまで来たのに連絡はなし。「どうして連絡くれなかったの?ランチくらいご馳走したのに!」と言うと、「後輩くんが一緒だったからさ」とのこと。

まあ、そんなものですよね。彼は彼で、親に干渉されず、自分でやりたいことをやる「自由」を満喫している。少し寂しいけど、家族で暮らしていた時は、異国ということもあり、なかなか一人で出かけることもできなかったし、今ようやくそういう時期に来ているのだな、と思います。

でもそんな親の寂しさも理解しているのか、最近は以前よりもLINEの返信が早くなったし、電話も返してくれるようになりました。この秋、彼は3年間続けてきたクロスカントリー部のキャプテンになりました。毎年3ヶ月だけの濃い時間でしたが、もうすぐそのシーズンも終わります。初めてのお役目での最後のシーズン、味わい尽くして終えて欲しいな。

娘も息子も、それぞれに新しい生活を一歩ずつ乗り越えようとしている姿を見ると、少し頼もしく感じたり、ちょっと寂しくなったり…。私は親として、つい「何か困ってないかな?」「しんどい時はないかな?」と心配な気持ちが尽きません。それでもどこかで「離れて成長していくことがこの子たちには必要なんだ」ということも理解しつつあり、そっと見守る気持ちを学んでいます。

あと半年ちょっとで息子は卒業。私もいつまでここにいられるかわからない。だから今この瞬間が、二度と同じ形では訪れない「今だけの時間」なのだな、と感じます。そして、私が日本に帰ってしまったら、娘のことは海の向こうから見守るしかなくなります。

そう思うと、彼らの成長を見守る毎日がますます愛おしく思えてきます。親としてどこまでそっと見守っていけるのか―今を大切にしながら、私たちなりの「親子の時間」を過ごしていきたいです。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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