ストーリーテリングについて語るブログ

22倍のインパクト!記憶に残るストーリーの力

「ストーリーで語ったことは忘れない」と言われますが、それはなぜなのでしょうか?実際に、単なる事実の羅列で伝えるより22倍記憶に残りやすいという研究結果も出ています(スタンフォード大学ビジネススクールのジェニファー・アーカー教授による)。今日はその理由を具体的に探っていきます。

なぜ記憶に残るのか

ストーリーはなぜ記憶に残るのでしょうか。3つの理由があります。

1.感情を揺さぶる
BBCの提供する「How stories shape our minds」によると、「物語を語る者が世界を支配する」というネイティブ・アメリカンのことわざ通り、物語(ストーリー)には想像を超える力があると語っています。この特集では子供たちに人気の2冊の本『ハリーポッター』と『ドラキュラ』を使った研究結果について触れています。

子どもたちに『ハリー・ポッター』の2、3章を読ませると、主人公の「心の力を使って何かを動かすことができる」という点を読み、他の子どもよりも自分を高く評価するようになるそうです。また、『ドラキュラ』の話を読んだ子は、自分の歯が他の人よりも少し長いと信じるようになるのだそうです。

本の1章か2章を読んだだけで、人はこのように感じます。心理学の観点から言えば、物語が私たちに与える影響はいくつかあり、私たちは、読んでいる世界にどっぷりと浸かり、もストーリーの中で登場人物に起こっていることが、自分たちにも起こっているように感じるのです。

2.視覚的要素
聞く人に「その場をイメージさせる、視覚的な要素」が加わることで、単なる情報以上のものとして、人の記憶に残ります。
例えば、『ハリーポッター』に出てくる古めかしい魔法学校の様子は、例え架空のものであっても、私たちの頭の中にイメージが浮かんできます。また、あなたも日常の生活の中で、例えば「Airbnb」などのサイトで、利用者の体験ストーリーを読むことで、急に実際の宿泊施設や利用した人々の表情がビビッドに浮かんでくることはないでしょうか。

3.リアルな会話・エピソード
既に何度も経験があるように、私たちは本を読んで、登場人物の世界に感情移入することがあります。実際にその場にいなくても、例え架空の人物であっても、です。例えば私たちは『ハリーポッター』を読むと、冒頭のシーンで親戚のダーズリー家の「居候」の身であるハリーが、意地悪な家族に邪険に扱われるシーンや、わがまま放題の一人息子ダドリーのセリフに腹を立てたり、感情移入をします。

また、スティーブ・ジョブズが初めてAppleでMacintoshを発表した時のセリフ「我々は世界を変えたい(We want to change the world)」やiPhone発表の時に語った「今日、Appleは電話を再発明します(Today, Apple is going to reinvent the phone)」は、実際にその場でスピーチを聞いていなかった私たちでも、それを聞いただけで強く記憶に残る、伝説のストーリーです。

「感情」+「論理」=ストーリー

脳科学的な視点でも、ストーリーが記憶に残りやすい理由があります。それは、ストーリーを聞くと、「感情」と「論理」が同時に活動するからです。一方、単なる事実の羅列であれば、脳はそれを「情報」としてのみ処理します。この場合、「感情」に触れる要素が少ないため記憶に残りにくのです。

このように、ストーリー形式で提供される情報は「感情」と「論理」が同時に動くため、「体験」として脳に記録されます。感情を引き出す要素があると、脳の「感情」を司る部分が活性化し、それが記憶と密接に関わる部分に情報を送ります。さらに、ストーリーには論理的な構造もあり、これが脳の「論理」を司る部分を活性化させます。感情と論理が一体となって情報を処理するため、記憶に残りやすくなるのです。

さらに、前述のようにストーリーには視覚や会話などの要素も含まれることが多く、これが記憶をさらに強化します。このように、ストーリーが脳内でどのように処理されるかを理解すると、その情報が心にも、そして記憶にも残る理由が明らかになります。

ビジネスから社会貢献まで

ストーリーが持つこの記憶の力は、ビジネスでも、プライベートでも、そしてチャリティなどの社会貢献活動でも有効です。ゴールデンサークル理論で説明した、あなたの「なぜ」を明確にし、(単なる情報ではなく)ストーリーとして語ることで、他とは一線を画した、「22倍も記憶に残る」効果を出すことができます。

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例えばあなたが「犬・猫の殺処分を防ぐための募金活動」をしているとします。そのような時に、あなたが実際に体験したストーリー(例:区役所の職員として、実際に処分に関わってきた過去の経験など)を情景やエピソード、その時に感じた気持ちを入れて語ることで、聞く人の印象に残り、記憶に残ります。『ハリーポッター』の話やジョブズのエピソードがなぜ私たちの記憶に残っているのか、そのエッセンスを思い返してみると良いかもしれませんね。

このように、ストーリーテリングは、単なる情報を「体験」に変え、人々を動かし、そして人の記憶に残り続けるパワーがあります。皆さんもこのことを意識したストーリー作りをしてみて下さいね。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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