前回は子供の頃好きだったことを振り返りましたが、今回は私たちの人生の転機となるような「苦労して乗り越えたこと、何かをやるきっかけになったこと」ついて考えてみたいと思います。
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私の人生にもいくつか大きな転機がありました。今回はその中でも特に印象深い経験を2つお話しします。
予期せぬ挫折とつかみ取ったもの
大学時代、私はフランス語の単位を落とし、その年は進級できない、という当時は立ち直れないくらい落ち込む挫折を経験しました。今思うと「たかだか1年」と思えるのですが、当初は自分の不運を嘆き、「なぜもっと要領よくやらなかったんだろう?」という後悔の念でいっぱいでした。でも、落ち込んでばかりもいられないので、「今度こそちゃんと取り組み、トップになろう!」と気持ちを入れ替える決意をしました。次は徹底的に勉強することにしたのです。
そして驚いたことに、この経験を通じてフランス語の美しさと楽しさに魅了され、どんどんはまっていったのです。これをきっかけに、翌年の専攻では仏文学を選ぶという、入学当初は想像もしなかった結果になり、そしてせっかく1年余分にやるのだから!と留学をすることにもなりました。当時2年間で取れるだけの授業を取り、ゼミの先生と交渉してレポートを出すことで、留学後も残りの年数で卒業できるようにしたのです。実はダメ元で相談したのですが、今は亡き2人の先生はとても理解のある方達でした。「普段からもっとお話しておけばよかったな」と思ったことを憶えています。
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そして、そのことがきっかけとなり、世界に拠点のある今の職場に就職することになりました。数年後、思いがけないフランス駐在の話が来た時も、少し迷いましたが行くことにしました。今だったら笑ってしまうような話ですが、当時は「この年で転勤なんかしたら、結婚できないかもしれないな。」という気持ちが一瞬頭をよぎりました(笑)。でも、結果として、夫とも駐在先で出会い、今家族として20年以上暮らしています。人生とは不思議なもの。
私たちは失敗や挫折を恐れがちです。できれば失敗したくないし、傷つきたくない。でも、実はそこから思いもよらない道が開けることがあります。私のこの学生時代の話もそうですよね。失敗した時は「なんで自分だけがこんな目に遭うのだろう」、と自分の不勉強をよそにわが身の不運を呪いましたが、「あの時」その失敗がなかったら、今どんな人生を歩んでいたのだろう?と恐ろしくさえなります・・・。
自分が行動してみる
もう一つの大きな転機は、約10年前の家族でのサンフランシスコ駐在時の経験でした。当時、私は夫の駐在の帯同として会社を休職してついていきました。その前の8年間のワーキングマザー生活で十分に子供の面倒を見られなかった罪悪感から、この期間中は「家で子どものケアを十分にできるお母さん」でいようと張り切っていました。ㅤ
でも、最初の数ヶ月、学校で友達らしい友達ができない息子の姿を見て、落ち込んでしまいました。「海外に行ったら子どもはすぐ英語が話せるようになる」と思っていましたが、実際はそんなに甘いものではなく、つらそうな姿こそ、見せなかったけれど、彼は彼で慣れない環境でたくさんのストレスと戦っていたのだと思います。一人学校のグラウンドで空想の飛行機を飛ばす姿を見ると涙がこぼれました。「親のエゴで海外になんて連れてくるんじゃなかったかな?」と自責の念に駆られました。
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そんな中で、少しでもこの状況が改善できるかな?と祈るような気持ちで、学校でのボランティア活動に参加したのです。Art(美術)の時間(アメリカでは、Artは親のボランティアで成り立っている州も!)に先生役のお母さんのアシスタントとして、紙を配ったり、作業のフォローをするのが最初の仕事でした。ドキドキしながら参加したのですが、子ども達を教室で間近で見られるのも楽しかったし、案外楽しくやっている息子の姿を見て、ホッとしたことを憶えています。先生や他のお母さんとお近づきになる機会にもなりました。
それをきっかけに、学校でこうした活動に時々参加するようになったのです。そんな時に気づいたのが、クラスマザーというとりまとめ役のお母さん達の存在。彼女たちは決して時間がある人ばかりではない。むしろ仕事を持って忙しい人も多いのだけれど、そんな人ほど、兄弟のクラス両方を掛け持ちしたり、仕事の合間を縫って遠足に顔を出したり、「できる時にできることを」やっていました。決して無理しているようには見えないのですが、そんな姿がとても刺激になったのです。私も外国人ではあるけれど、今は時間だけはある。やってみよう!とその後数人で分担しながら、その仕事をやることになりました。
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他のお母さん、お父さん達とパーティやイベントの準備をしたり、案内のメールを一生懸命考えたりしたことが懐かしく思い出されます。これも、息子のことをきっかけに自分が動いたことがきっかけとなり、そんな楽しい経験に変えることができました。そして、このクラスマザーとしての経験や、アメリカの職場に頻繁に顔を出すお父さん達の積極的な姿勢に刺激を受け、自身のキャリアにも新たな挑戦をする勇気が湧きました。
その後、帰国後約2年で今度は自分がニューヨークに駐在することになり、今度は夫が初めての専業主夫に挑戦することになりました。もうすぐその期間も終わりを迎えますが、彼にとってもこの3年間はとてもチャレンジングな日々だったようです(毎日「今日の夕食何にしよう?」と考えるのが苦痛だったようではありますが・・・)。私も「働いて帰ってくる」お父さんの立場がよく理解できるようになりました。以前家にいた時の自分がどう映っていたのかも想像して苦笑いすることも・・・。
ㅤあなたの原体験を探る
皆さんも似たような経験はありませんか?私のように、一見ネガティブに思える出来事が、実は新たな可能性を引き出すきっかけになることもあると思います。前回は「子どもの頃好きだったこと」についてお話ししましたが、今回の「乗り越えたこと、何かをやるきっかけになったこと」も繋がるところがあるはずです。「〇〇の経験があったから、今ここにいる」ということ、それを見つけてみませんか?
次回も原体験について、書いていきます。良かったらこれを機に、皆さんも過去を振り返ってみてくださいね。
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コメント
コメント一覧 (2件)
私も5年後海外に家族で移住を考えているので参考になりました。
慣れない土地に行くのは自分だけではなく、子供もそうですよね。
この5年間で英語力ももちろん、やれることは全部やっておこうと思えました。
自分の原体験の振り返りもやってみます。
素敵な記事をありがとうございます。
西原さん、コメントありがとうございます!西原さんも海外に行きたいと思っているのですね。是非、チャレンジしてください!今やれることをやっておくのもそうですが、「完璧」を目指そうと思わない方が良いかもしれません。日本でいくら準備してもできないことはあるし、行ってから何とかなることもたくさんあるので、現地でできるだけ多くのことを吸収するつもりで良いのではないかなぁ、と思います。奥様やお子さんのケアはもちろん大事ですが、頼れる人がいない分、家族の結束も強まるのではないかな?応援しています!