ストーリーテリングについて語るブログ

話に深みをもたらす「事例」の力

「ストーリーテリング」を語る上で欠かせないのが「事例」です。何かを説明する時に、「例えばね」と伝えることで、各段に話が分かり易くなりますよね。事例は話の中で非常に重要な役割を果たし、その話がどれだけ伝わるかを大きく左右します。

例えばですが、「先週は観光地がとっても混んでいたの」と説明する時、「まるで土曜日の渋谷のセンター街のように」とか「お正月の神社くらい」などと表現すると、「ああ、人では溢れかえっていたのだろうな」と容易に想像することができます。

事例の効果

事例があることのメリットとして、以下の3つが挙げられます。

1.理解しやすい: 抽象的な概念や複雑な話でも、事例を使うことで具体的にイメージしやすくなります。

例えば、抽象的な話でいうと、「複利の力でお金は増える」、という話はよく聞きますよね。でも、ただ「複利」とだけ聞いてもピンとこないかもしれません。そんな時、たとえば、「10歳の時に親から1万円もらって、年利5%の口座に入れたとしましょう。20年後、その1万円はなんと2万6千円になるんです。」こんな風に具体例で説明されると、複利の「力」がよくわかりますよね。

2.共感しやすい: 事例は、話に感情や人間性を加え、相手が共感しやすくなります。

例えば、ある有名なベストセラー作家がいます。実は彼は最初の5年間、本がほとんど売れませんでした。でも、その後、彼はめげずに本を出し続け、ようやく4冊目で、念願のベストセラー入りをします。この話を聞くと、「どんな人でも失敗を経験しているんだ」勇気づけられ、その人に急に親しみがわき、共感します。

3.記憶に残る: 事例を用いることで、話がより印象に残りやすくなります。

人は物語に登場のヒーロー、ヒロインのことは記憶に残ります。たとえば、映画「タイタニック」で、主人公が最後に自分の命を犠牲にして恋人を救う場面。このような場面の事例は、ただ「愛は自分の命をも犠牲にできる、尊いもの」と説くより、具体的で心に残ります。

以上のように、事例を使うことで話はぐっと深まり、心に響きます。事例は、単なる情報を「体験」に変え、人々を動かす力があります。これが「事例の力」です。どうでしょう、心に残りましたか?

事例を使うコツ

何かを伝えたい時、相手の印象に残したいとき、その「伝えたいこと」を「どう伝えたら、相手の印象残るか」を考えます。

例えば、失敗をして落ち込んでいる新入社員に対して、ベテランの先輩が一言言うとしたら?
「僕も新人の時は周りが皆優秀に見えて、落ち込むことばかりだったんだよね。僕の課には当時とても尊敬できる先輩がいたんだ。先輩は凄すぎて僕には到底追いつけなかったんだけど、一つだけ僕にも勝てることがあった。それは『誰よりも早く出社する』こと。それを発見して続けてから少しずつ仕事の仕方も変わって来たんだ…。」なんて話をすると、新人くんも「へぇー先輩にもそんな時代があったんだ」と納得して話を聞いてくれるかもしれません。

ポイントは決して「上から」「正論を語る」のではなく、その人のところまで「下りていき、同じ目線で語ること」です。ベテラン先輩も新人くんに合わせて、自分の(ダメダメだった)新人時代まで下りていき、ストーリーを語っています。このことで、相手との距離がグッと縮まるのです。

事例のストック

事例を効果的に使うためには、普段から色々な「ネタ」を頭の中にストックしておくことが大事です。これは自分が経験したことだけでなく、他人の話やテレビ、本で得た知識も含みます。

例えば、あなたが「運動は身体だけでなく脳にも良い」という「事実」を知っていたとしたら、1つ具体例を使ってこんな風に伝えることができます。

具体例:
「私は以前英語の試験前に単語を毎日10個ずつ覚えていたんですが、この年になるとなかなか新しいものが頭に入っていかないんですよね。そんな時、運動と脳の関係のことを知って、毎日の単語学習の前に15分間のジョギングを取り入れることにしました。

その効果はてきめん、ジョギングを始めてから1週間もすると、以前よりも短い時間で単語を覚えられるようになり、しかも忘れにくい、という嬉しい効果があったのです!これは運動によって、脳内にある物質が増え、記憶や学習に関わる神経回路が強化されるからなんです。だから、試験勉強前にはあえて軽くジョギングをすることをお勧めします!」

こんな風に伝えると、単に「運動は脳にも良い」という伝えるよりも、「ジョギングをしたら単語をたくさん憶えられた人がいる」という事実が記憶に残り、その効果が実感できます!

このように、事例は話に深みと説得力をもたらします。何かを説明するときや、相手に何かを理解してもらいたいときは、事例をうまく使いましょう。そして、そのためには、日常生活で出会う多くの事例をメモしてストックしておくことが重要です。こうすることで、あなたの話は一気に伝わりやすく、そして印象に残ります。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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