ストーリーテリングについて語るブログ

映像のような文章を書くにはー「ドキュメンタリー文章」のススメ

今参加している藤沢あゆみさんと戸田美紀さんの共著『WEB文章術 プロの仕掛け66』の購入企画として、本の内容を1コマずつお二人が講義してくれるという特典があります。その中で、先日「ドキュメンタリー文章」(by藤沢あゆみさん)について紹介がありました。これは「ストーリーテリング」を言語化する上で非常に参考になる手法であり、是非こちらでもご紹介したかったのです。

さて、この「ドキュメンタリー文章」のことをあゆみさんは「読む情熱大陸」とも称しています(あゆみさんは実際にその名前で文章を書くサービスも提供しています)。なぜこの名前なのか?それは、この文章が、読者にまるでTV番組の『情熱大陸』を見ているかのような印象を与えるからです。「ドキュメンタリー文章」は書き手が動画のディレクターのように、一つ一つのシーンを切り取る感覚で文章を書くことがポイントです。このように切り取ったシーンを読者に「見せる」ことで、深い理解と感動を生むのです。

「ドキュメンタリー文章」の究極の目的は、読者が取り上げている人やテーマを「好きになってもらう」ことです。人は自分と関係ないことには興味を持ちません。だから、読者が感じる「人ごとではない」という感覚を大切にします。例えばその人の生い立ちや生じた問題などでそういったことを取り上げるのですが、「過去にいじめられていた」とか「学校の成績が悪かった」経験など、自分と何等かの共通点があると、その話は「人ごと」ではなくなり、強く引き込まれます。

「物」を売らずに「物語」を売る

「物を売らずに物語を売る」。これが「ドキュメンタリー文章」のモットーです。商品を直接前面に出して売りつけるのではなく、背景にある、物語を通じて自然と興味を持ってもらいます。人はその人の「ストーリー」に共感するからです。

例えば、「昔いじめられていた」あなたに、「学生時代の英語の成績はずっと2」だったあなたに、人は親近感を持ちます。ここは是非知っておいていただきたいのですが、「いつも人気者で、学校の成績はオール5でした。」というあなたにではありません。このことがわかり、見る人、聞く人を引き込むことができると、売れないものはなくなります。つまり、売ろうとしなくても、自然にこれを聞いた人が買ってくれるのです。

「ドキュメンタリー文章」6つのプロセス

では、実際に「ドキュメンタリー文章」はどうやって書けば良いのでしょうか。
6つのプロセスがあります。

  1. 導入:その人の日常、なぜその仕事をしているのか
  2. 生い立ち:その人のパーソナリティー
  3. 問題:仲間、壁にぶち当たる
  4. 山場:解決の糸口を見つける
  5. 達成:ミッション、今の活動が決まる
  6. エンディング:その人らしい名言(爽快なエンディングテーマとともに)

この6つのプロセスに沿って、情報を整理し、一つ一つのポイントを丁寧に書きます。

実際にどうやって作るの?

藤沢あゆみさんはこの6つのプロセスを使って、たくさんの文章を作っています。その人が「なぜその仕事をしているのか」わかると、それを際立たせるための周辺の文章が浮かんでくるのだそうです。音楽でいうとそのサビが決まると、そこに持っていくメロディーが決まるイメージですね。

ちなみに、あゆみさんはご自身のプロフィールもその流れで書いています。

藤沢あゆみオフィシャルブログ Po...
藤沢あゆみ『藤沢あゆみプロフィール 』 藤沢あゆみです。作家になって19年、恋愛や人間関係の本を28冊書いています。10万部突破が2冊、翻訳された本が1冊あります。ゼロから出版し続けている経験を生か…

藤沢あゆみさんは、28冊の書籍を出しています。そのほとんどは恋愛本です(①導入)。
彼女は生まれながらにして、「10人中9人が振り返る」見た目の症状を抱えていました(②生い立ち)。
「見た目の症状があってもいじめらたくない、人気者になりたい!」彼女はつ常にそう思っていました(③問題)。

彼女にある日、ある出来事が起こります。道ですれ違った女の子が「あ!」と言って立ち止まったのです。彼女は「また指を差されるのかな、イヤだな」、と身構えていました。でも、その後その子が言った一言は「服、かわいいね」でした。「服、かわいいね…、かわいいね…、かわいいね…」この言葉は生涯彼女にとって、忘れられないものになりました。

その時、彼女は、「避けられないようなダメージがあっても、他に『いいところ』があれば、人はそっちを見るんだ!」ということに気づくのです。こうして彼女はコミュニケーション能力を磨き、「どうしたらかわいくなくても人気者になれるのか」、「みんなにとって嫌じゃないのか」を具体的に研究し、自分のできることを一つずつトライしていきました。それがその後恋愛作家として活躍する藤沢あゆみさんの原点です(④山場)。

「人に好かれることをやっていく」経験を積んだ彼女にとって、一般の人が恋愛で悩む「一人に好かれる」「告白する」「振られる」ということは全て子どもの頃からやっていたことでした(⑤達成)。
彼女はその経験を生かして、恋愛の相談に乗ったり、恋愛作家として恋愛の本を書くようになります。彼女は言います「魅力がない人はいない」と(⑥エンディング)。

このあゆみさんのストーリーは彼女が恋愛作家になるまでのストーリー(=プロフィール)でもあります。そんな彼女のプロフィールを読んだNHKのディレクターから実際に出演依頼があり、Eテレに出演された経験があるそうです!だから、あゆみさんは自身のプロフィールもドキュメンタリー的に書いておくことをお勧めされています。

リアリティを深めるために

自分や人を紹介する文章を書くには、自分やその人について集めた情報の中で、「今の活動に繋がる情報」をピックアップして文章を組み立てます。多くの人はその人の抱える問題点(あゆみさんの場合、見た目の症状)を解決したポイント(人に好かれるためのコミュニケーションなど)が今やっていること(恋愛作家)に繋がっています。その部分を自分の言葉で紹介することができれば、人を惹きつける「ドキュメンタリー文章」ができます。

ドキュメンタリー的な文章を書くには、実際に多くのドキュメンタリー番組(『情熱大陸』などの)を見るのがコツだそうです。大切なのはリアリティ。実際の番組は映像や音楽を多用していますが、文章ではそうはいきません。でも、文章でできることもあります。

それは「写真」を挟むこと。導入、生い立ち、問題、山場、達成、エンディングなど、各シーンに紙芝居のように行間に入れるのだそうです。写真はできるだけリアリティーがあり、動きのある写真であること。あえて、の見切れた写真、焦点がぼやけた写真なども生きてくることがあります。これらを組み合わせると、文章が「生きた」ものになります。

いかがでしょうか?この「ドキュメンタリー文章」の要素を生かして「ストーリー」を作ると、あなたにも映像のような文章ができるのではないでしょうか??まさに「読むドキュメンタリー番組」ですね。私も、挑戦します!!

藤沢あゆみさんの「読む情熱大陸」シリーズはこちら。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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