次回のスピーチ勉強会の準備をしている中で、「求められる話し方」ってどんなスタイルだろうと、色々考えていました。そんな中でであったのが今井孝さんの『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、話し方・つながり方』。こちらには「ありのままの自分で堂々としていることで、対人関係の悩みから解放される」ということが書かれています。「等身大」、「ありのまま」が良いという考えは比較的よく聞きますし、他の方も書いているのですが、この本で面白いな、と思ったのは「自分のキャラ設定をする」という考え方です。
不安なのは「キャラ設定」がないから!
この本では、「今の自分」を受け入れられていて、自分は「こういうキャラ」と自他ともに明確に表明しておくと、その枠から出て苦しむことはない、ということが書かれています。つまり、不必要に自分を大きく見せる必要はない、ということです。言い換えると、そのキャラに対して「(他人から)期待されていない」ことを自分に課す必要はないのです。
分かりやすい例として、あなたが結婚式で友人代表スピーチを頼まれたとします。この時、それを依頼したお友達があなたに期待しているのは「アナウンサーのように流暢に、かつ堂々と話す人」のキャラではありません。いつものままの「朴訥とした、はにかんだ笑顔のあなた」がちょっと緊張しながらも、等身大で話してくれること、なのです。
でも、多くの人は、「スピーチ」と言われると、「上手に話さなきゃ―!」、「緊張して言葉が出なくなったらどうしよう!」と、自分の求められているキャラを「超えた」役割を演じようとして苦しみます。
まさに私も過去に同じ経験があります。「人前で話をして」と言われたら、上手に、完璧にこなさなくてはいけない、と思っていました。でも、それを追求し過ぎると、何だか逆に、心がない話し方になってしまったことも・・・。その時は「どうしてそうなってしまうんだろう?一生懸命やったのに。」と思いましたが、今思い返すと、「ああ、自分の期待されている以上のことをしようとして、背伸びしてしまったんだな。」と腑に落ちます。
人は誰しも多かれ少なかれ、自分を「大きく」見せたいものです。「できれば上手と思われたい」、「バカにされたくない」「、能力がない、と思われたくない」、など色々な感情が渦巻くものです。だからつい、背伸びして、「完璧キャラ」を演じようとしてしまいます。でも、それは「本来求められているあなたのキャラ」ではないのですよね。俗に言われる「大丈夫、期待してないから」というセリフは「(あなたにそのキャラを)期待していないから」というなんです。
キャラ設定に必要な2つの要素
本書によると、「キャラ設定」に必要な要素は2つあります。1つ目はあなたのルーツ。あなたが今までたどってきた道、今の自分を形づくっている経験、どうしてその場所にたどり着いたのかという理由、などを考えます。
2つ目はゴール。そこで何をしたいのか、どんな未来を得たいのか、どれぐらいのレベルを目指すのか、を考えて作ります。
たとえば、あなたがOLで投資経験ゼロで株や投資の勉強会に出るのであれば、あなたのルーツは「〇〇会社に勤めるOL、投資は未経験の初心者。でも、将来のことは不安で勉強会に出ようと思い立った。」
そして、そこで得たいゴールは「とりあえず株や投資の種類を知ること、どれか一つ、始めるための方法を知ること」あたりのはずです。そんなあなたが「(自分以外の参加者は)投資歴10年超の人ばかり、自分はついていけなくて恥ずかしい」、「何も知らないお馬鹿さんと思われたくない」などと思う必要はないのです。むしろ、何もわからなくて当然です。そのことが腑に落ちると、きっと堂々と初歩的な質問をすることができるはずです。
このように自分のルーツとゴールを明確にすると、自分がその場で何者かが明確になり、どんな場所でも緊張せず、等身大の自分でいることができます。
もちろん、あなたの「キャラ」は場面場面で使い分けていきます。社内で後輩たちに対しては「ちょっと厳しい先輩」キャラのあなた、家庭では「奥さんに頭が上がらないお父さん」キャラ、近所では「趣味はテニス。週末は仲間とテニスにいそしむ」キャラ、などなど・・・。
自己紹介の場でも有効
自己紹介の場でも、このキャラ設定は有効なのだそうです。本書によると、自己紹介は「相手の不安を解消してあげるのが自分の役割」と考えると気が楽になると書かれています。初対面はお互い様で、相手もあなたがどんな人かわからず不安なのです。だから、あなたが最初に、会話の題材になるような「ネタ」を提供してあげると会話が弾みます。どんな仕事をしていて、どんな目的でそこに来たのか、趣味は…など、相手に話題を「先出し」してあげるイメージです。
もちろん仕事の場でも。もしあなたが営業マンだとします。商談であなたが相手に「買わせよう!」と思うと、気の弱い人は罪悪感を感じ、心のブレーキがかかってしまうものです。でも、もしあなたがこの時、「相手の問題を解決するためのサポーター」というキャラ設定を自分にしていたら、どうでしょう?そのキャラのまま、お客様の問題に寄り添った提案ができませんか?
こんな風に場面場面で適切な「キャラ設定」をしていくことで、気持ちがスッと楽になりますね。私は今まで「キャラ」というのは一つしかない、と思っていました。でも、「場面や相手によってキャラを使い分けても良い!」、「人によって態度が変わっても良い!」というのは新鮮な発見でした。
万能な「与える人」キャラ
今井さんは、全体を通じて「与える人」でいると心地がいい、と書かれています。「自分は与える人間だ」というキャラ設定をすることで、自然と「何かしてあげよう」と思えるようになるし、人に対して「何かしてもらおう」と思ったり、「自分ばかりやらされている」と感じる(=被害者キャラ)ことが少なくなるのだそうです。
たとえば、レストランに入ったら店員さんに「美味しかったです」と伝えたり、職場で活躍した人に「おめでとう」と伝えたり、プレゼンの時は聞いてくれる人に必要な情報を届けようと話します。今まで心の中で感じていても、「まぁ、いいか」と飲み込んでいた言葉を「あえて」伝えます。だって、あなたは「与える人」キャラなんですから。
こうすることで、今まで「自分ばっかり・・・」と被害妄想的に自分に矢印が向いていたとしても、相手に矢印が向きます。どこに行っても、「目の前の人に何を与えらるか?」を考えると、何だかゲームみたいで、楽しくなりますね。
キャラに没頭しよう!
また、キャラを演じる上で大切なことは「そのキャラに没頭すること」です。なぜかというと、役になり切って没頭していると、人は最高のパフォーマンスを発揮することができるのだそうです。例えば、ディズニーランドのキャストなどはまさにそうですよね。役になり切って、全力でお客様を喜ばせようとしています。
これは話す時も一緒です。うまく話せない時は、「キャラ設定を確認して、自分の想いや役割を思い出し、そこに徹する」。そうすると、自然と言葉に気持ちが乗って、聞き手の心に響きます。今度あなたが人前でスピーチやプレゼンをする機会があったら、「自分はどんなキャラを演じるか?」を意識してみてくださいね。そして、相手やあなた自身の感情にどんな変化があるか、ワクワクしながら観察しましょう!
次回の「スピーチ勉強会②(話し方編)」ではこんな話もする予定です。私も参加して下さる皆さんも、「そろそろ上手に話さなきゃ」呪縛から一緒に解き放たれることができたらな、と思っています。そして、この「キャラ設定」、これだけで勉強会してワークしても面白いな、とムクムクとアイディアが湧いてきました!
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