ストーリーテリングについて語るブログ

「未来」を見せるストーリーの力~Airbnbの「第二の家」から学ぶ

前回のスターバックスに引き続き、今回も成功している企業の「理念、ストーリー」について書いてみます。今日は今や多くの国で利用されている「Airbnb」についてご紹介します。

Airbnbが提供する「第二の家」

2008年に設立されたAirbnb(エアビーアンドビー)はもともと、サンフランシスコに住むブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアが、自分たちのアパートにエアマットレスを敷いて泊まりたい人々に場所を提供する、というシンプルなアイデアから始まりました。当時、彼らは家賃が払えなくて、どうしようかと頭を抱えていました。一方で付近の街は会議シーズンでどのホテルも満室状態でした。それを受け、「会議で来た人たちはホテルがいっぱい。それなら、我が家で泊まってもらおう!」と閃いたのが同社のスタートです。

最初はただのマットレスと朝食だけ。でも、そのアイデアは瞬く間に火がつきました。お金を払って泊まる人も、お金をもらって泊める人も、皆が得をする。今、そのサービスは「Airbnb」として、世界中で利用されいます(実際に私もアメリカや日本で活用しています!)。

Airbnbのコンセプトは「Home Away From Home」、つまり「遠く離れた第二の家」です。宿泊施設はもちろん、地元の人々の生活文化に触れ、その場所の本当の魅力を知ることができる。この「第二の家」感、地元の文化に触れられる体験は、同社他の宿泊オプションと一線を画する大きな理由になっています。つまり、そのウリは「場所以上の場所、体験そのもの」を提供すること。そしてこれが、多くの人々に選ばれる理由でもあります。

このコンセプトもスターバックスの「サードプレイス」同様に、利用者の私たちにもいつの間にか浸透しています。私たちもAirbnbを利用する時は、単なる宿泊場所ではなく、(短期間でも)現地に住むという「体験」もしたい、そんな思いで利用するからです。

同時に、このブライアンとジョーのAirbnb誕生のストーリーは、「困ったときにこそ新しい扉が開く、ピンチをチャンスに」ということを教えてくれています。家賃が払えないことから、マットレス1つで部屋を貸すなんて、まさにシリコンバレー発のベンチャー企業らしい誕生エピソードですよね。

でも、どうでしょうか?そんな理由でAirbnbが誕生したことを知ると、「私もそうやって気軽に部屋を貸したり、借りることができるかもしれない」というマインドになりませんか。それこそが現在Airbnbがこれほどまでに浸透して、爆発的に利用者が増えた理由ではないでしょうか。

もちろん、Airbnbが誕生する前から、世の中には数多く、部屋の期間貸しや個人でのやり取りは存在していました。でも、利用者は一部の人に限られていました。これに対して、Airbnbは世界中からアプリで気軽に貸したり、借りたりができるその操作性とともに、同社の誕生ストーリーやコンセプトが広く浸透したことで、利用者の層を大きく広げたのです。まさに「誰でも貸せる、借りられる、皆が得する」という気持ちにさせたのがAirbnbなのです。

このほか、この手のビジネスのネックとして、従来は信用面のリスクがありました。これに対し、Airbnbでは利用者と提供者双方がお互いをレビューできるようになっており、その情報が開示される仕組みになっています。また、パスポート等、本人確認ができる証明書の提出を義務付けたり、ホストと宿泊者を保証することができるようになっていることも、利用者の安心感につながっています。

そして、Airbnbでは宿泊を提供する人は、自分たちのサイトにそこに泊まることによって、どんな「旅、体験」ができるのかのストーリーを語っています。これに対して、利用した人も、その感想のストーリーを口コミの形でフィードバックする仕組みができています。これぞ、「ストーリーの循環」がうまく機能しているケースですね。

あなたの「旗」を立てて未来を見せよう

Airbnbのコンセプトは「ただの宿ではない、遠く離れた『第二の家』」です。このコンセプトを気に入って、私や多くの人が同社のサービスを利用しています。もし仮にあなたが宿泊施設を提供する立場であれば、他のホテルにはない、「あなたの場所だけが提供できる何か」を語ることで、利用者には、その他大勢の中からあなたの場所を選ぶ「理由」ができます。

そのための「旗」になるのがストーリーです。「旗」を立てて、あなたのお店(施設)をお客様に見つけてもらい、ファンを作っていきましょう。あなたのお店がどういう思いで生まれたのか、どういうお客様に利用していただきたいのか、そのためにあなたが何をできるのか」、それを見せてあげることで、お客様は迷わずあなたのところに来てくれます。

例えばこんな感じです。
「都会の生活に疲れて〇年前に移住。古民家を1年間かけて自分たちの手で一つ一つ改装して手作りの宿に仕上げました。以前の自分たちのように、都会の生活で疲れた人に『ひとときの安らぎ』を提供したい、そんな思い出でやっています。『田舎暮らし』を体験してみたい方、私たちと一緒に朝採れ野菜を収穫してて食事を楽しむ、そんな生活を体験してみませんか?」

こんな風に書いてあったら、「ここに行ってみようかな?」「オーナーはどんな人なのかな?」と興味がわきませんか?でも、ただ「古民家を改装した宿です。1泊〇〇円です。」と書いてあるだけだったら、「古民家・・・本当に大丈夫なのかな?ホテルにしておこうかな・・・。」と思ってしまうかもしれません。

まずは「自分を知ってもらうこと」、それがストーリーの始まりです。そして、「そこに行ったら、それを得たらどんな未来が見えるか?」をイメージさせてあげて下さい。お客様とあなたの距離がグンと縮まります。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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