前回は車椅子を購入した話を書きました。今回は手術のことを書きます。

息子が付き添いに
手術が予定されていたのは11月29日。サンクスギビングの休暇で子どもたちが帰省しているタイミングでした。娘はよく来ていましたが、息子がマンハッタンの住まいに来るのは8月以来初めて。せっかくの帰省中に手術の予定が入ってしまい申し訳ない気持ちもありましたが、そばにいてくれる安心感もありました。
手術には付き添いが必要とのことで、普段の通院はOさんがサポートしてくれていましたが、この日は息子にお願いすることに。先生に「18歳の息子でも大丈夫ですか?」と確認するとOKとのこと。これが17歳だったらダメだったのかも?
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病院に着いたところで、保険証を忘れたことに気づき冷や汗…。でも、事前登録されていたおかげで問題なし。受付を済ませ、準備スペースに案内されると、息子は15分ほどでリリースされ、手術後に連絡が入る流れに。
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その後は麻酔科医や執刀医のL先生が次々と説明に来て、同意書にサイン。L先生は「ねぇ、バカなことを聞くようだけど、教えてくださいね。どっちの足を手術するんだっけ?」と確認し、右足にマジックで印をつけました。間違いを防ぐためのルールだそうで、日本でも同じような手順があるのか気になりました。
時を超えて繋がる経験
今回の手術では、折れた右足首の内側(脛骨)と外側(腓骨)の2ヵ所を固定するため、プレートとスクリューを挿入することになりました。以前、娘が手首の骨折で同じような手術を受けたことがあり、手術自体への不安はそこまでありませんでした。
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アメリカでは、子どもは半年~1年後にプレートを外すのが一般的ですが、大人はそのまま残すことが多いそう。一方、日本では大人でも外すケースが多いらしく、どちらが良いのかは分かりません。今のところ違和感はないので、様子を見ながら考えようと思います。
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自分の体の中にこういう金属が入るのは初めての経験ですが、娘の手術を見ていたおかげで驚きは少なく、すんなり受け入れることができました。本人が望んで選択したわけではないけれど、当時7歳でこんな大きな手術を経験した娘は本当に偉かったな、と改めて思います。不思議な感覚ですが、娘の経験が時を超えて今の自分につながっているような気がしました。
オペ室へ
病院に着いてから約1時間半、いよいよオペ室へ移動することになりました。この日はサンクスギビング休暇の影響で、この時間の手術は私だけ。多くのドアの前を車椅子で通る時、広い空間が静まり返っていました。そして、こんな日に働いてくれる医療スタッフに感謝の気持ちが湧きました。
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オペ室は薄着のせいか少し寒く、看護師さんに「寒すぎると頭が痛くなるので暖かいものを掛けて下さい。」と伝えました。こんなことを言えるあたり、意外と冷静だったのかも。頭痛持ちの私は、手術後目が覚めた時、頭も痛い、ということは避けたかったのです。
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そして、全身麻酔ー数分で意識が遠のき、次に目が覚めるまでの記憶はまったくありませんでした。
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以前娘が7歳でオペをした時は、私も全身麻酔が効くまでオペ室に立ち会いましたが、この時は「好きな映画」を聞かれ、看護士さんが頭上のモニターに投影してくれた「ホームアローン」を見ながら、好きなフレーバーの麻酔(いちごやコットンキャンディーなど10くらいのチョイスがあります!)を選び、3分ほどでウトウト眠りについたのが印象的でした。麻酔に味があるなんて、いかにもアメリカですよね!さすがに、私には映画やフレーバーを聞かれることはなかったのですが、やはり5分もしないうちに意識がなくなった気がします。
目が覚めて~あっという間の3時間半
手術室に入ってから約3時間半後、目が覚めました。息子は待合室で「まだ連絡が来ないなぁ」とそわそわしていたそう。当然、私は時間の経過をまったく感じられず、ただグルグル巻きになった足を見て「本当に手術したんだな」と実感しました。でも、その時はまだ麻酔も効いていたので、痛みもないし、不思議な感じでした。
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しばらくしてベッドから起き上がり、椅子に座るとPT(Physical Therapist:理学療法士)がやってきて、松葉杖や車椅子の使い方をレクチャーしてくれました。それまでは見様見真似の自己流で使っていたので、長さの調整や回転の仕方など目からウロコの情報ばかり。
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アメリカでは、手術や診察を行う病院とリハビリを担当するPTが分業されており、通常のリハビリは民間のPT(Physical Therapy:理学療法士のいるリハビリ施設)に通うことになります。術後2週間後の診察を経て、ようやくリハビリが開始できる仕組み。なのでこの2週間はこうした「道具」を使いこなして、サバイブして行く!そんな期間です。ちなみに、術後6週間は「安静期」という期間で、この間は足には一切荷重できません。
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また、術後6週間は「安静期」とされ、足に一切の荷重ができません。この「術後2週間」「6週間」という期間は最初「そんなに正確に回復するものなの?」と疑問でしたが、実際にその時期を迎えると、驚くほど先生の言った通りに状態が改善していくことに驚きました。
私はいつも「2週間経ったらリハビリが始められる」「6週間経ったら歩ける」と目標にしていました。この期間が自分の中で大きな励みになり、少しずつ回復への道を進んでいく力になった気がします。
アメリカの手術は基本日帰り!
PTの指導が終わると、帰宅の準備をしました。アメリカでは余程の大手術でない限り、手術当日に退院するのが普通。出産しても翌日退院が基本なので、この国の分業体制が徹底されていることを改めて実感しました。日本ほど「入院」している人は多くないし、「治療は病院、療養は家庭、リハビリはPT」というすみ分けができています。
帰りももちろん車椅子対応のUberを利用しました。ドライバーさんは「人を助ける仕事がしたかったから、この仕事を選んだ」と話していて、ホスピタリティの高い人が多いことを感じました。
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帰宅後は息子に近くの日本食レストランでテイクアウトを買ってきてもらい、3人で「タイプロ(Timeleszというグループがメンバーを募集するオーディション番組)」を楽しく観ながら夕食。術後の夜~翌朝までは麻酔が効いていたせいか、ほぼ痛みなし。「本当に手術したの?」と思うほどでした。
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しかし、翌朝になると状況は一変しました。朝食を終えたあたりから、チクチクと痛みが…。薬を飲んでもズキズキが止まらず、久しぶりに悶絶する時間に。外出していた子どもたちに「痛みが強くなってきたから、お昼は買って帰ってきてね」とメッセージを送るほど、しんどい時間を過ごしました。
次回は術後の生活について書きます。
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