先日娘が14歳になりました。
14歳ー私にとって、いちばん記憶のハッキリしている、いちばん古い過去です。13歳以前も断片的な記憶はもちろんあるけれど、自分の中で、なぜか14歳の時ほど鮮明で、鮮やかに蘇る年はないのです。それほど、「14歳」という年は特別な1年間でした。
引っ越し、転校、初めての朝シャン、ヘアドライヤーとの格闘の朝・・・。初めて一人で洋服を買いに行ったのも14歳でした。私が今やっている「書くこと」に繋がる「作文」で表彰されたのも14歳の時。これをきっかけに、色々なことに自信が持てるようになった記憶があります。
部活を一生懸命やり始めたのも14歳。それまでは「消去法」で何となく入っていた陸上部でしたが、大学出たての「熱血先生」の指導のもと、放課後は毎日男子と一緒に学校の周りを走っていました(当時、陸上部の長距離チームには女子がいなかったのです)。今考えると恋愛と呼べるようなレベルではありませんでしたが、それでも人を好きになったり、なられたり、ということもこの頃が始まりでした。
「14歳の記憶」が薄れない理由
以前のブログで『成熟脳』(黒川伊保子著)の感想を書きましたが、あらためて読み返してみました。人間の脳の仕組みが「なるほど」と腑に落ちる良書です。
本書によると、人間の脳は12~13歳で「子ども脳」から「おとな脳」への過渡期(=脳の調整期間)を迎えるそうです。思春期の中学生が何かと不安定なのはそのためです。
そして、14歳で「おとな脳」に生まれ変わります。私たちの記憶の中で14歳の時の経験を生々しく、鮮明に憶えているのはこの時期の脳がまさに「おとな脳」になりたてで、「生まれたての感性」で見たあらゆることを鮮明に脳に刻印しているからだそうです。
あらためて、14歳って人間にとって、とても特別な年齢なのですね。本書では「自分を見失ったら14歳のときに夢中だったものに触れてみる」ことを勧めていますが、私自身も先に書いたように、14歳の時の記憶は、不思議なくらい鮮明にあるし、今魅力を感じて取り組んでいる「文を書く」ということを意識し出したのもこの頃。「偶然」という言葉では片づけられないくらい、14歳で出会ったものは大きいなぁ、と感じます。
こんなに違う「日常」
こうしてみると、14歳になった私の娘は今、どんなことを考えて生きているのだろう?と興味が湧くとともに、私の頃に「当たり前」と思っていた、日常の色々な経験ができているのかな?と少し不憫にもなります。
彼女はこの多感な年代を海外で過ごしており、日本にいる同年代の子たちとは異なる、独自の体験をしています。それは、私が14歳の時に経験したこととは全く異なるものです。その違いが彼女にとってどのような意味を持つのか、そして、それが今後の人生にどんな影響を与えるのか・・・。
アメリカにいる間は、私がかつてしたような、一人で洋服を買いに行くことや、友達と電車でどこかへ出かけたりすることも、14歳では難しいでしょう。そもそも普段、日常生活で「お金を使うこと」が少ないのです。近所に気軽に行けるお店は少なくて、せいぜいドラッグストアかファストフードくらい。お小遣いを持って本屋さんに行ったり、雑貨屋さんに行ったり、買い食いする機会も、ほぼありません。
時々友達とSNSで女子トークをすることはあるようだけど、今は近所に住んでいる友達はほとんどいないので、放課後、リアルで友達と遊ぶこともなかなか叶いません。
今は帰宅後、ネットをしたり、時々本を読んだり。娘は本を読むのが好きです。それでもYouTubeやネットの誘惑には勝てないけれど、熱中して数時間読み込んでいることもあります。そんな時は昔の自分を見ているようです。本を読んで、「私もこの時代に生まれていたかった。エモい、昭和!」とのたまう娘・・・。
これが海外に住む14歳女子の現実です。
娘が日本に帰ったら、きっと同年代の子たちと自分を比較して、色々驚いたりギャップを感じるんだろうな、と思います。前回帰国した時は、バスに乗って一人で隣町のショッピングセンターに行くことがやっとでしたので、渋谷や原宿に行って、買い物をしたり、レストランに入ったり、というのは、なかなかハードルが高いでしょうね。
羨ましいぞ、14歳!!
でも、彼女はこちらで、日本にいたら恐らく経験できないことを経験しています。英語もその一つ。4歳からアメリカにいた彼女には「英語脳」があるのか、私とは違うところで英語を理解しているようです。
現地校でも色々な経験をしました。パジャマを着て学校に行ったり、先生とアイスクリームを食べに行ったり映画を見たりする、楽しいエレメンタリー(小学校)時代。その次は、多様性に触れるとともに、アウェー感も感じたミドル(中学校)時代。
秋から通い始めた日本人学校では日本の学校ならではの「窮屈さ」はあるけれど、アットホームな安心感も感じているのではないかな。クラスメイトが何気なく送ってくれた「誕生日おめでとう!」のLINEメッセージを密かに喜んでいたりも・・・。
たぶん、彼女は今この瞬間に、「今経験していること」の一つ一つが貴重とは思わないでしょう。でも、後で振り返った時に、間違いなく、彼女の記憶の中で鮮明なのがこの「14歳」の1年間だと思います。
楽しいことばかりでなくても、この時代に感じたこと、乗り越えたことは間違いなく、彼女の財産になるはず。だから、親としては「できれば転んでほしくない」という思いを抑えて、色々経験してもらおう、と思います。それは、人生の「先輩」として、私自身ももっと「転んで」おけばよかったな、と思うことがたくさんあるからです。『成熟脳』でも筆者の黒川伊保子さんは「失敗は脳の最高のエクササイズ」と書かれています。
14歳ー青春真っ只中の彼女の人生に幸あれ!
羨ましいぞ!14歳!!
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