ストーリーテリングについて語るブログ

今すぐ外に出て走ろう!~『運動脳』を読んで

脳はいくつになっても進化するってホント?

今月7年ぶりにジョギングを始めた。中高時代は陸上部だったし、大人になってからも走っていた時期はあったのだが、何となく止めてしまい、最近は運動と言えばもっぱら自宅でヨガマットの上でやるトレーニングか、たまのウォーキング程度。そんな私が急にやる気になったのが、この本

一般に、人間の脳は25歳をピークに、年齢とともに縮む一方というのが定説であった(1年で約0.5%ずつ小さくなると言われている)。ところが本書によると、運動により脳細胞の新生を促すことができ、身体を活発に動かせば、2倍にも増えるというのだ。運動の効果はダイエットや健康にとどまらず、脳にまで良いとは!
(以前、「老人脳」について書いた記事はこちら。)

細胞が新生すると何が良いのか?新生は記憶力の向上などに役立つが、それだけなく、私たちの心の健康にとても重要だという。逆に新しい細胞が作られないと、うつ病や認知症の発症の要因にもなってしまう(これらは新しい細胞が作られないことを原因として発症すると言われる)。

なぜ、今、脳のためにも運動が必要なの?

古代狩猟生活の時代から現代デジタル社会まで、環境的には非常に大きな進化があったのだが、実は脳や身体は1万2千年前からほとんど変化していないという。つまり、私たちの脳は古代人とそれほど変わりがなく、狩猟生活を送るのに最適化されたままである。つまり、「生物学的には私たちの脳や肉体は今もサバンナにいる」状態なのだ。

古代、人間は1日約11,000~14,000歩程度歩いていたとされるが、現代の先進国における平均はその半分程度。古代と比べると現代は圧倒的に運動量が足りず、「脳」と「私達の環境」が矛盾を起こしている。私たち多くの現代人が心や身体を病んでしまう理由は、ここにある。つまり、古代と同じような運動量をこなすことで、脳にとっても良い効果が得られる。

脳細胞が増えるとどんなメリットがある?

運動により新しく脳細胞が作られ、増えることのメリットとして、本書ではざっと以下が紹介されている。
・ストレス耐性が強くなる
・集中力が増す
・うつ病、意欲の低下を予防・改善する
・幸福感が増す
・記憶力が良くなる
・創造性が増す
・学力が向上する
・認知症を予防し、アンチエイジングになる

どれも魅力的だが、脳細胞が増えることは老若男女にとり、メリットしかない。例えばうつ病は脳細胞が十分に作られないことにより、意欲の低下が引き起こされると言われているが、運動により脳細胞を増やすことで抗うつ剤以上の効果がノーリスクで得られる。
また、人間の脳は25歳ごろをピークに、1年で約0.5%ずつ小さくなると言われているが、一定の運動(週3回40分の早足ウォーキング)を1年間続けたグループの治験データでは、脳の記憶中枢である海馬が2%成長していたという。

本書によると、運動をすることで創造性が高まり、アイデアを活かす力が高まったり、アイデアそのものがあふれ出すようになるという(運動により、脳が過剰な情報量にも対処できるようになる)。だから、仕事で行き詰まったら外に出て歩く、走る、というのは理にかなっている。作家の村上春樹も1日の中で10キロほど走る時間を取っているというし、ベートーヴェンも創作活動のために、毎日かなりの時間を散歩に使っていたという。私自身も朝ジョギングをしてから仕事をすると、気持ちがすっきりとして、身体や脳にエンジンがかかった状態で始められることを実感している。

体力が知力を決める?

そして、運動は子どもにももちろん効果がある。子どもでも、鍛えれば脳の重要な部位である海馬が大きくなる。運動をしている子どもはしていない子に比べて学力が高い傾向にあるし、休み時間に身体を動かすことで、その後の集中力が増すという。そう考えると、子ども時代の「10分休み」、「20分休み」に校庭で遊ぶことは、身体だけでなく、脳にも良いことをしていたことがわかる。文武両道という言葉があるが、運動ができる子は勉強もできる確率が高い。

ちなみに、どのような運動を選ぶかはあまり重要ではなく、「心拍数を増やすこと」、「とにかく身体を動かすこと」に気を配ると良いという。ジョギング程度の運動をわずか4分するだけでも物事に集中しやすくなるし、10~40分の運動を立った何度かしただけで、ワーキングメモリーや読解能力が向上し、注意力も持続する、と良いことづくめだ。

具体的には何をしたら有効なの?

本書では、ウォーキングであれば30分程度×週5回、ランニングであれば、30~40分程度×週3回以上が有効だとされている。そして、できれば歩くよりは走る方がより脳には効果があるらしい。これは、肉体にある程度の負荷がかかる方が効果が高いからだという。これは古代狩猟時代、脳が集中力を高めることにより、獲物を得られやすくなるなど、より生存の可能性を高くしていたことに起因する。負荷は心拍数がバロメーターとなるが、目安としては40代は1分間に130-140回、50代は1分間に125回程度が良いようだ。

また、運動の種類と効果として、暗記の能力を高めるにはランニングが、連想記憶(例:カギをどこに置いたか思い出すなどの)は筋力トレーニングがより効果があるという。ただ、本書では、まずは外に出て、動いてみることが第一歩だと勧めている。歩いたり走ったりすることで、脳の血流はすぐ増えるが、新しい細胞や血管が形成されたり、それらが結合されたりするためにはある程度の期間が必要だからだ。それでも、週に数回の運動を積み重ねれば、間違いなく効果が出るし、運動が脳にもたらす恩恵は、私たちの想像をはるかに超えるほど大きいという。というわけで、皆さんも今すぐ外に出て、歩こう、走ろう!

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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